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隕石に当たって倒れたローマ法王。これが神の思し召しということか。かと思うと、ヨゼフ・ボイス愛用のジャケットをまとって洋服掛けで首を吊っているのはアーティスト自身だったりする。美術館の床から侵入する泥棒も彼自身だ。1960年、イタリア出身のアーティスト、マウリツィオ・カテランの作品にはとぼけたユーモアと皮肉な残酷さが漂う。
カテランの作品はいつも物語を感じさせる。作品を見ているうちに観客の頭の中で個人的な記憶や物語が次々と湧いてくる。作家は自ら革命を起こすことはないが、それを誘発することはあるというわけだ。中でも彼が好んで扱う「死」というテーマはたくさんの物語を生み出す。死はもちろん悲劇的なものだが、カテランの作品を見ると思わず笑みがこぼれてしまう。
そこには彼が生まれ育ったイタリアの精神的風土が影響しているのかもしれない。女性や食べ物にうつつを抜かす世俗性と、宗教に絶対的な信頼を寄せる信仰深さとの両極端が同居している態度だ。カテランは型にはまったアート界の伝統や政治・社会の矛盾をえぐり出し、隅々までていねいに作られた彫刻やインスタレーションという形でそれを暴いて見せる。
ブレゲンツ美術館で開かれる個展でも「死」は大きなテーマになる。展示室が埋葬室になってしまうのだ。展覧会のオープン前に多くを語ることはないカテランだが、この作品について「常識的なものと非常識さとの間にあるもの」という。「僕の作品は穏やかで心地いいものであると同時に、腐ってねじ曲がったぼろぼろのものなんだ」。
カテランのねじれた笑いはより強い感情を引き起こす。清濁併せのむ勢いが、さらに大きな「革命」の引き金になる。
Text: Naoko Aono
「Maurizio Cattelan」
2008年2月2日~3月24日
[問]Kunsthaus Bregenz
Karl-Tizian-Platz, Bregenz, Austria
10:00~18:00(木~21:00)月休
http://www.kunsthaus-bregenz.at
La Nona Ora (The Ninth Hour),1999
Mixed media
Lifesize
Installation, “Apocalypse,” Royal Academy, London
Courtesy Galerie Emmanuel Perrotin, Paris
© Maurizio Cattelan
La Rivoluzione Siamo Noi, 2000
Polyester resin figure, felt suit, metal coatrack
Puppet: 124.9 x 32 x 23 cm
Wardrobe rack: 188.5 x 47 x 52 cm
Installation, Migros Museum fur Gegenwartskunst, Zurich
Photo: Attilio Maranzanoaaa
Courtesy Galerie Emmanuel Perrotin, Paris
© Maurizio Cattelan
Now, 2004
Mixed media, life size
Courtesy the artist and
Marian Goodman Gallery, New York
© Maurizio Cattelan
Untitled, 1998
Skeleton of a dog, newspaper
Lifesize
Installation, ‘Ironic’, Museum for Gegenwarstkunst, Zurich
Courtesy the artist
Untitled, 2007
Taxidermic horse
Installation, Museum fu¨r Moderne Kunst, Frankfurt am Main
Courtesy of the artist
Photo by: Axel Schneider
©Maurizio Cattelan