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世界的な認知度のメゾンの直営店が立ち並び、表参道の新名所となったGYRE。その3Fにあるギャラリー ホワイト ルーム トウキョウが、3/7～6/8までの期間、写真家ジョエル・マイロウィッツによる、写真とビデオ作品を用いた個展『The Elements: Air/Water Part 1』を開催する。これに連動したイベントとして、同ビル2FのギャラリースペースEYE OF GYREで、3/8に、本人によるプリンティングワークショップとサイン会が行われる。

マイロウィッツは、1938年、ニューヨーク出身。オハイオ州立大学で、絵画を学び、芸術学修士号を取得。広告のアートディレクターとして数年働いたのち、写真を独学で学び、1962年からフリーで活動を開始する。はじめはストレート写真の伝統に則り、ライカを片手にモノクロで街を撮っていたが、70年代半ばから、大型ビューカメラに持ち替え、カラーフィルムを用い、より豊かな色や光の描写を追求しはじめる。彼も含む、同時期に同じような手法に着手した、ウィリアム・エグルストン、スティーブン・ショアー、ジョエル・スターンフェールドらの一連のカラー写真は、1981年、サリー・オークレアが「ザ ニュー カラー フォトグラフィー 」と題した展覧会を開催し、同題の写真集の出版したことを皮切りに、ニューヨーク近代美術館のジョン・シャーカフスキーの力によって、それまでほぼモノクロームのみで成り立っていた芸術写真の可能性を切り開き、『ニュー カラー』と呼称された。

代表作の『CAPE LIGHT』をはじめ、写真集や映像作成など精力的な創作活動を続け、作品は世界の350以上の美術館やギャラリーで展示され、アメリカ写真界の代表的な作家として国際的な評価を集めている。近年では、9.11の直後、ニューヨーク市立美術館の依頼で、ワールド トレード センター跡のグランドゼロにおける崩壊と再生の活動を撮影し、8000枚以上のイメージを残したことが記憶に新しい。現在はニューヨーク市内の29.000エーカーに及ぶ公園の記録に取り組んでいる。すべての写真は、情景をありまのままに写そうとする作家の眼差しと、光と色彩の効果による高い再現性で、観者をある種の疑似体験へと誘い、精神をやさしく包み込むような特性を有している。

今回の個展で公開される『The Elements: Air/Water Part 1』は、2007年7月、彼がフロリダのプールの水中見学室において、オリンピックの飛び込み選手のビデオ監督をしていたことをきっかけにはじまった。このプロジェクトは、マイロウィッツによる草分け的なカラー写真からの概念的な出発を示すものであり、以前の作品と同様に「The Elements」を構成する新しいビデオ及び写真作品は、場所・光・空間を描写している。がしかし、彼は、この重要なテーマに対し、伝統的な技法は適切でないと感じており、空気・水・土・火という四大元素の現象を考察する上で、「現象そのもののパワーを視覚的な体験として再現することが課題だ」と述べている。それを実現するため、この作品では、水平線と深さのある空間の錯覚から離れることによって、課題をクリアしようと試みが見られ、作品のスケールやサイズが鑑賞者をイメージの中へと歩ませ、元素の中に置かれた自身の存在を知覚させるような、より完全な感覚体験を可能とさせる平面性を保っている。すでにFire/Earth、Earth/Waterの映像作品を撮り終え、今後も関連作の制作を続けていく予定だという。

このように、写真と映像の特性を見極め、生命に必要不可欠な要素の捉えようとするマイロヴィッツの行為は、幻想的であったり仮想的な世界を提示するのではなく、現実の中にある肉眼では捉えきれない事象を機械の眼によって正確に写し、物事の関係性を考察しながら、その空間に特別な意味を見出している。

Text:Tsuneyuki Tokano