08 5/30 UPDATE
今年2月の香港を皮切りにパビリオンごと世界の7都市を巡回するという壮大なアート・プロジェクト「MOBILE ART」。香港に続く第2の開催地は東京。国立代々木競技場の中、どことなくアンモナイトのような、UFOのような、大胆で奇妙な建造物が姿を現した。フューチャリスティックなのにオーガニックな不思議な建造物。これこそモバイル・アートのための「アートコンテイナー」で、気鋭の女性建築家、ザハ・ハディットのデザインしたこのパビリオンは移動する建築である必然性から、約300のパーツに分かれ世界を旅するのだという。
このパビリオンの中で展示されているのが、シャネルの象徴ともいえるあのキルティングバッグをテーマにしたアート作品。参加したのはレアンドロ・エルリッヒ、ソフィ・カル、ファブリス・イベール、シルヴィ・フルーリ、スティーブン・ショア、オノヨーコ、荒木経惟ら世界各国の20組のアーティストだ。一見シャネルのキルティングバッグと関連のなさそうな自由な発想で生まれた作品から、アーティストの個性ひとつだけで成り立っている作品、さらにはユニーク、あるいはシニカルな視点とともにあの高級なバッグをもてあそんでいるかのような作品までさまざまである。
観賞のスタイルもユニーク。エントランスでは全員にMP3プレーヤーが配られ、スタッフによってひとりずつプレイボタンが押される。ヘッドホンから流れてくるジャンヌ・モロー(!?)によるナヴィゲーションによって、観客は作品と順番に触れていくというもの。音楽とポエティックなナヴィゲーションは、作品解説のような押し付けがましいものではなく、それぞれの作品とゆっくり向き合う時間を与えてくれるのである。全行程で40分、不思議なアートのラビリンスを散歩しているかのようなエンターテイメントだ。アートへの貢献というシャネルの姿勢から生まれた「MOBILE ART」、もちろん入場は無料(ただし入場は事前予約が必要)。ブティックだけでは感じられない、シャネルの魅力を発見できるというのはあまりに普通過ぎる感想かもしれないが、あるいはシャネルのキルティングバッグに全く興味がなくても楽しめるアート・パビリオンというのは、やはり素晴らしい。7月には次の都市ニューヨークへと移動をはじめてしまうモバイル・アート、この街にとどまっている間に是非!
Photo & Text:Shoichi Kajino