08 10/30 UPDATE
ヴェルサイユ宮殿といえばフランスへの観光客の大半が訪れるパリの一大観光スポット。あでやかな装飾や家具に華麗な王朝の香りが漂う。そこで現代美術の個展が開かれている、というだけでもちょっとミスマッチな雰囲気なのに、よりによって作家はジェフ・クーンズだ。ポルノ・スターをモチーフにした作品などで多方面を騒がせてきたアーティストである。
室内や建物の前に置かれた作品は全部で17。ロココな室内に置かれたマイケル・ジャクソンとペットの猿のバブルスくんは、あたかもそこが自分の家であるかのようにくつろいで見える。女王が使っていた寝室には花を生けた花瓶のオブジェが置かれて、これも意外にしっくりととけこんでいる。
一方、ジェフ・クーンズのアイコンとなった巨大なバルーン・アートのようなオブジェや、ハートや円などをモチーフにした作品、漫画のようなロブスターやカメは周囲の装飾からかけ離れた、強烈な違和感を演出する。つやつやしたバルーンの表面に華麗な壁画が映り込んだりするのも面白い。女王付きの女官の控えの間には、解体した掃除機を使ったオブジェを置いた。「掃除機って子宮っぽいと思ったからさ」とクーンズは言う。
もちろんこの展覧会に対して、フランスの保守層からは抗議の声が挙がった。フランスが誇る文化遺産にアメリカの、しかもこんなふざけたアートを並べるのは何事だ、というわけだ。クーンズはそれに対し、フランスの心の広さに感心してみせるとともに、巨大な植え込みで作ったオブジェはヴェルサイユ宮殿の庭園からヒントを得たものだと発言。彼らの神経を逆なでしている。
スキャンダラスなアートを誰もが知る有名文化遺産に置くことで、かけたコストよりも遙かに大きな宣伝効果を得ているフランス政府も、意外に商売上手なのかもしれない。
Text:Naoko Aono
Jeff Koons Versailles
12月14日まで
Chateau de Versailles
9:00〜18:30
(11月1日以降は〜17:30、
土曜日は18:30〜22:00も開館)
入場料 13.5ユーロ
tel. +33-1-30 83 78 00
http://www.jeffkoonsversailles.com/
Photo by GAILLARDE RAPHAEL/GAMMA/Eyedea/AFLO
Photo by SOULOY FREDERIC/GAMMA/Eyedea/AFLO