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ネオ・トロピカリア:ブラジルの創造力

ネオ・トロピカリア:ブラジルの創造力

したたかに美しく闘う、
生きるためのアート。

08 11/13 UPDATE

カラフルな服をまとってサンバを踊る。色とりどりのビニールで区切られた通路を歩いて、色つきの空気が充満したような空間を味わう。これはアートだけれど、ある種の社会運動でもある。1960年代にブラジルでおこった「トロピカリア」というムーブメントだ。その目的は欧米の模倣から脱却し、「古くさい」「洗練されていない」とされていたブラジルの文化を現代という時代にふさわしいものにすること。さらにはアートと生きることを一体化させることだった。

東京で開かれている「ネオ・トロピカリア:ブラジルの創造力」展は60年代の「トロピカリア」と、90年代以降のブラジルのアートとの結びつきを検証するもの。アートだけでなく建築、ファッション、音楽までジャンルを超えて「トロピカリア」のさまざまな側面を見せる。

その理念は、たとえば1950年代からブラジルで活躍した建築家リナ・ボ・バルジの活動に現れている。ボ・バルジは美術館であっても人々が集まることができる広場を設けるなど、建築が持つ社会的な意義を強く自覚していた。

その考え方は21世紀のルイ・オオタケの活動に引き継がれている。貧しい人々が住むファベーラと呼ばれる家並みのファサードをカラフルなペンキで色とりどりに塗り分ける、というプロジェクトだ。そこに住む人たち自身が作業に参加することで、人々の意識も変わっていく。

同じくファベーラで勝手に電気を引いて町中にコンセントを出現させ、人々が自由に使えるようにするというプロジェクトを行ったのはルーベンス・マノ。プレーヤーでレコードをかけるレコード売りや、調理に使うホームレスなど、路上がショップやキッチンになるという現象を誘発した。

ブラジルでは今も経済格差など、多くの社会問題を抱えている。そんな状況でもルイ・オオタケやルーベンス・マノらはしたたかに、そして美しく闘っている。柔らかいクッションに寝そべって上から垂れ下がる巨大な粘菌のようなオブジェを眺めるエルネスト・ネトのように、身体感覚を変えてくれるものも。混迷を極める現代、彼らに学ぶべきものは多いはずだ。

Text:Naoko Aono

「ネオ・トロピカリア:ブラジルの創造力」

2009年1月12日まで
東京都現代美術館(東京都江東区三好4-1-1)
10:00〜18:00(入場は17:30まで)
月休(祝日は開館、翌火休)、
12月28日〜1月1日休
1,200円
Tel : 03-5245-4111
http://www.neo-tro.com/

1リナ・ボ・バルジ
「サンパウロ美術館(MASP)プロジェクト」
1997年
Photo:Fabiano Accorsi
リナ・ボ・バルジ財団蔵
Collection:Instituto Lina Bo e P.M.Bardi - São Paulo - Brasil

2エルネスト・ネト
《リヴァイアサン・トト》
2006年
パンテオン(パリ)での展示風景
Photo:Mark Domage
Courtesy Galeria Fortes Vilaça, São Paulo

3ジュン・ナカオ
《見えないものの縫製》
2004年
Photo:Sandra Bordin