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マーク・ロスコ「瞑想する絵画」

マーク・ロスコ「瞑想する絵画」

静謐な絵画に囲まれた
マーク・ロスコの瞑想空間へ。

09 2/13 UPDATE

茫漠とした画面を見つめていると、どこか違う場への窓が開いていくように見える。自らの精神が投影されているようにも思える。マーク・ロスコの絵画はそんな不思議な、独特の感覚を呼び起こす。

彼は長年、自らの作品だけで構成されたスペースを作りたいと考えていた。照明も展示も自分の思い通りに作られた特別な空間だ。そこではロスコの絵画が観客を包み込み、互いに響きあって音のない音楽を奏でる。

ロスコにそのチャンスが訪れたのは1950年代後半のことだった。ニューヨークのシーグラム・ビルにあるレストランの壁に飾る絵を頼まれたのだ。ロスコは喜んで仕事にとりかかる。が、そこがスノッブな人々が集う最高級レストランだと知った彼は、一度は引き受けた依頼を断ってしまう。あとには引き取り手のいない30枚の絵画が残された。

「シーグラム壁画」と呼ばれるこの連作のうち7点は川村記念美術館の「ロスコ・ルーム」に展示されている。また9点はロンドンのテート・ギャラリーに収蔵された。こうして50年以上にわたって散逸していた「シーグラム壁画」のうち15点が、川村記念美術館で開かれる個展で集合する。これだけの数の「シーグラム壁画」が1度に展示されるのは、おそらく最初で最後の機会だ。ロスコが熱望した「自分の作品だけの空間」でゆるやかな瞑想にひたる、静かな時をすごそう。

Text:Naoko Aono

マーク・ロスコ「瞑想する絵画」

2月21日〜6月7日
川村記念美術館
千葉県佐倉市坂戸631
9:30〜17:00
月曜休(5月4日は開館、5月7日休)
一般1500円
tel. 0120-498-130

写真:テート・モダンのロスコ展会場
(2008年)
©Tate, London 2008