09 8/13 UPDATE
独特の空気感がある画面で人気の写真家、森本美絵。アーティストのポートレイトから建築、風景まで、どんなモチーフを撮っていても、そこには彼女にしか捉えられない光がある。今、東京で開かれている個展は彼女の家族の日常を捉えたもの。15年にわたって故郷の岡山に通い、撮りためた写真だ。
生い茂る木、白い犬、ちょこんと座っている祖母、仏壇。どこか懐かしい気分もする風景が1枚の印画紙に2つ、3つと重なり合う。この作品は複数のネガを一枚の印画紙にプリントすることで作られている。画面の重なり方や色調の調整など、すべて手作業で作っているため、同じものを再び作ることはできないという。
このシリーズのタイトルは「Single Plural」。ひとつでありながら複数、という意味だ。複数の人が一つの家族を作っている、とも、複数の画面が1枚の印画紙にプリントされている、とも読める。もちろんそれ以外にもいろいろな「答え」を考えることができるだろう。印画紙にはそれぞれ別の時期に、別の場所で撮られたものが重なりあっていることも。写真家自身の家族を撮っていても、抽象化された画面にはたくさんの物語が感じられる。いくつもの画面から生まれる新しい光と空気を感じられる写真だ。
Text:Naoko Aono
「Single Plural」
場所:MISAKO & ROSEN
日時:開催中〜9月13日(8月10日〜17日休)