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リフレクションー映像が見せる"もうひとつの世界"

リフレクションー映像が見せる"もうひとつの世界"

社会や内面を映す映像が開く、別の世界への窓。

10 3/03 UPDATE

何かはっきりとこっち、と方角を示されるわけではないけれど、今まで気づかなかったところに"窓"があいているのを見つけたような気持ちになる。見終わったあと、そんな気分になれる展覧会だ。

テーマは映像だけれど、モニターやプロジェクタで映像を見せるだけではない。たとえば河原のブルーテントに住むピエロの生活を映した八幡亜樹の映像は、青いメッシュで作られた大きな小屋のようなスペースの一角に映し出される。見上げると紙で作った下着やタオルが干されている。紙を使っているのはそれが映像の中の世界とは違う、作家が作ったものであることを示すためだと彼女は言う。では映像に映し出されているのは現実か、そうでないのか。「少なくとも映像に映されていることが実際にあったことは確かです」というのが彼女の答えだ。

アーティスト集団、Chim↑Pomのコーナーにはぼろぼろになった高級ブランドのバッグや財布が。これらはカンボジアで地雷除去のために、自分たちが一番大切にしているものを使った結果なのだという(地雷除去の方法の一つに、安全に地雷を爆発させる、というのがあるのだそうだ)。モニタには、チャリティにいそしむセレブに扮したChim↑Pomのメンバー自身が映し出される。ふざけているのかとも思うが、現実に彼らはカンボジアの人々としっかりした信頼関係を築いている。偽善と善とが複雑によりあわされているように見えるけれど、なぜか爽快な気分になる。

ベルリンで活動するマティアス・ヴェルムカとミーシャ・ラインカウフの二人組は信号などで止まっているバスや地下鉄の窓を勝手に掃除するというパフォーマンスを行い、それを映像に記録する。喜んで礼をいう人、とまどう人、怒り出す人と反応はさまざまだ。「すでに確立されている社会的なシステムをほんの少しだけ変えてみるとどうなるかを実験しているんだ」。

展覧会タイトルの「リフレクション」には反映、反射といった意味の他に熟考、内省といった意味もある。何かを一度、自分の中に映し出すことで違う角度からの思索が広がる。それは"窓"を見つける大きなヒントになるだろう。そのあとの一歩をどう踏み出すか、考え込んでしまう人もいるかもしれない。でもいろんな踏み出し方があるのだから、片っ端から試してみればいいのだ。

Text:Naoko Aono

『リフレクションー映像が見せる"もうひとつの世界"』

水戸芸術館現代美術ギャラリー
開催中~2010年5月9日
9:30~18:00
月休(3月22日、5月3日開館、3月23日休)
一般800円
Tel:029-227-8111

http://www.reflection-alternatives.jp

1《サーカス・テント・ブルー》2007
映像からの静止画
八幡亜樹

2《ばくはつ》2007
「サンキューセレブプロジェクト アイムボカン」より
映像からの静止画
Chim↑Pom
Courtesy:無人島プロダクション