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2008年春、西沢立衛の設計でオープンした十和田市現代美術館。その近くに、国内外のアーティスト・建築家たちによるアート広場とストリート・ファニチャーが完成した。北国の空を背景に点在するアートは思わず笑えるようなものが多いのがいい。
中でもとくに脱力できるのがオーストリアのアーティスト、エルヴィン・ヴルムの「ファット・カー」と「ファット・ハウス」。タイトルの通り、ぶくぶくと太った車と家(実物大)だ。家の中に入ると、その家自身がしゃべるという映像が流れる。「私って太った家なの? 太った家なんてありえない。私は太ったアートなの? 太ったアートなんてあるかしら? アーティストなら答えられる? でもそれって、アーティストに期待しすぎだと思う」。
ドイツの4人組、インゲス・イデーは巨大な「おばけ」を作った。「もし中世の人間が現代にタイムスリップして電話の声を聞いたら、おばけの声だと思うはず。そんなふうに、今でも僕たちはおばけに囲まれているんだ。でも誰も見たことがないから、普通のアーティストは作品にしようとは思わない」
巨大なおばけの隣には美術館と同じ、西沢立衛が設計したトイレがあってもう一人、銀色の別のおばけが男子トイレを覗いている。見上げると目が合ってしまう、困ったけれどかわいいやつだ。
歩道には座ったりできるストリート・ファニチャーがある。海外でも注目の建築ユニット、マウントフジアーキテクツスタジオは鏡面ステンレスのベンチを作った。長方形の板を折り曲げて、一方を地面に埋めただけだ。一つだけでは自立しないから、いくつかが組み合わされているのだけれど、とくに厳密なルールがあるわけではなく、「生け花のように」その場で配置を決めていったのだそう。磨き上げられた表面にはすぐそばの桜の木が映り込む。青から白へと次々と色を変える空も映って、いつまでも見飽きない。
これらのオブジェやストリート・ファニチャーは恒久設置されるが、美術館では8月29日まで「草間彌生」展を開催中。美術館の壁には赤い水玉が貼られ、庭には銀色のボールが大量に転がっている。赤い水玉は近くの商店街のショーウィンドーにまで浸食している。他の人には太刀打ちできない草間のエネルギーが町にあふれているようで、なぜかまたも笑いがこみ上げる。
Text:Naoko Aono
Arts Towadaグランドオープン記念展
『草間彌生 十和田でうたう』
開催中~8月29日
十和田市現代美術館(青森県十和田市西二番町10-9)、中心商店街ほか
9時~17時、月曜休館 一般400円
Tel:0176-20-1127
http://www.artstowada.com/
http://www.city.towada.lg.jp/artstowada/
草間彌生展開催中の十和田市現代美術館
エルヴィン・ヴルム「ファット・カー」
肥満体の車のオブジェ。
photo:©Sadao Hotta
インゲス・イデー「ゴースト」(左)、「アンノウン・マス」(右)
「アンノウン・マス」は西沢立衛が設計したトイレをのぞきこんでいる。
photo:©Sadao Hotta