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「芸術? そんなものはケトバシてやれ!」「法隆寺は焼けてけっこう」。そんな過激な言葉を残し、84年の生涯を全力で走り抜けた岡本太郎。今年は彼が生まれてちょうど100年の節目にあたる。東京国立近代美術館で開かれる個展は「対決」をキーワードに、彼の軌跡を振り返るもの。約130点の作品が、息もつかせぬ勢いで迫ってくる。
太郎は規制の価値観を否定し続けた。「芸術はきれいであってはならない」と言い、伝統的(と思われていた)「わび・さび」を否定した。こうして生まれた激しい色彩や、どこか懐かしいようでいて見たことのない形は、あまりに強烈すぎて拒否反応を示した人も多かったはずだ。しかし、彼が作った絵画や彫刻などを、彼の書いた著作物とあわせて見ていくとその真価がわかってくる。
中でも、彼がパリで学んだ民族学に基づく著作は興味深い。沖縄の聖地「御嶽(うたき)」やイザイホーなどの神事を取材した「沖縄文化論」(中公文庫)、東北地方の土着の宗教や祭りを記録した「日本再発見」「神秘日本」(「岡本太郎の東北」(毎日新聞社)に収録)などには太郎が発見した、縄文的な美の源流があふれている。
19歳でパリに渡り、戦争によりやむなく帰国するまで10年間を過ごした太郎は、普通の日本人が気づかなかった日本の美を敏感に感じ取っていた。縄文土器に代表される、濃い情念が渦を巻いているような紋様はヨーロッパのケルトやメキシコの土着の造形にも通じるものがある。文明や国境を越えて人々の原初的な感覚に訴えかける何かを、太郎はつかみとっていたのかもしれない。
巨匠ピカソと対決し、テーマ館のプロデューサーを依頼された大阪万博のテーマ「人類の進歩と調和」と対決し、最後には自分自身と対決した岡本太郎。あらゆる価値観がぐずぐずと崩れていくかに見える今こそ、あらゆるものと対決を続けた彼の力が必要なのだ。
text:Naoko Aono
『生誕100年 岡本太郎展』
3月8日〜5月8日
東京国立近代美術館
東京都千代田区北の丸公園3−1
10:00〜17:00(金〜20:00)
月休(3月21日、28日、4月4日、
5月2日は開館、3月22日休)
一般1,300円
http://taroten100.com/
『電撃』 1947年
『傷ましき腕』 1936年/49年
『疾走する眼』 1992年
所蔵・写真提供:岡本太郎記念館、
川崎市岡本太郎美術館
©岡本太郎記念現代芸術振興財団