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メタボリズムの未来都市展:戦後日本・今甦る復興の夢とビジョン

メタボリズムの未来都市展:戦後日本・今甦る復興の夢とビジョン

日本発の建築運動「メタボリズム」を検証する。

11 9/09 UPDATE

ベッドや机を備えたカプセル型のユニットを着けたりはずしたりすることで人口の増減に対応する建物。東京湾を横断して東京から千葉まで伸びる海上都市。1960年代にこんな建築や都市計画を考えていた人々がいた。彼らの発想のもとになったのは日々、細胞を入れ替えることで生長し、環境の変化に適応する生物の「新陳代謝」というメカニズム。彼らはその「新陳代謝」を表す「メタボリズム」という名のグループを名乗り、さまざまなプロジェクトを展開した。メタボリズムが生まれて半世紀、その思想を検証する展覧会が開かれる。

メタボリズム・グループには参加しなかったが、その芽を生み出したのは丹下健三だ。『山梨文化会館』は柱の間に空間を増設することで"生長"する建物。実際に建てられたあとになって増築された部分もある。メタボリズム・グループに参加した菊竹清訓は住居やオフィス、商業施設、さらには公園までもが一つの建物に入った高層ビル「エコポリス」を提案している。同じくメタボリズム・グループの一人、黒川紀章の「中銀カプセルタワービル」は脱着可能なカプセル型ユニットによるビル。コア(柱)にカプセルを取り付けていけば、理論上は無限に生長できる建物だ。都市計画家、浅田孝は建築家も施工会社も入れない南極観測隊昭和基地で隊員が滞在する住宅を造るため、建築の専門知識がなくても組み立てられる住宅ユニットを考案した。一般のユーザーが住宅を造れるようにすることで"増殖"をより容易にする試みだ。

展覧会では彼らの思想やプロジェクトを写真や模型、当時のスケッチなどで紹介する。メタボリズムの思想はあまりに先進的だったため実現したものは少ないが、未完のプロジェクトをCGで再現した映像も。森美術館がある六本木ヒルズの敷地内に「中銀カプセルタワービル」のカプセルが一つ、展示されるなど、海外にも影響を与えた建築運動に多角的にアプローチする。

メタボリズム・グループの目的の一つは、第2次世界大戦で焦土と化した日本の復興でもあった。自然災害や経済危機によって建築や都市のあり方が改めて問われる今、彼らの声に耳を傾ける価値はあるはずだ。

text:Naoko Aono

『メタボリズムの未来都市展:戦後日本・今甦る復興の夢とビジョン』
9月17日〜2012年1月15日
森美術館(東京都港区六本木6−10-1)
tel: 03-5777-8600(ハローダイヤル)
10時〜22時(火、9月25日は〜17時、1月3日は〜22時)会期中無休
入館料1,500円
http://mori.art.museum/

1菊竹清訓『エコポリス』
1990年代前半
2『日本万国博覧会 お祭り広場』
1970年 大阪 撮影:新建築社写真部