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「くそ、あいつが全部やっちまった」。若き日のジャクソン・ポロックはピカソの画集を床に投げつけて、こう叫んだという。ピカソを超えるべく苦しんだ彼が到達したのは、床に置いたキャンバスに絵の具をたらし、まき散らすという独自のスタイルだった。「ポーリング」と呼ばれるこの手法は抽象絵画の新しい地平を開き、後のアクション・ペインティングやパフォーマンスを生み出す原動力ともなる。
ポロックは18歳で画家を目指し、ロサンゼルスからニューヨークにやってくる。ピカソのキュビスムの他、メキシコ壁画などの影響を受けていた彼は当初、具象的な絵画を描いていた。彼のトレードマークともいえる「ポーリング」という技法を使い始めたのは30歳のころ。始めのうちは部分的に使われるだけだったが、1947年、35歳のときには画面全体をポーリングによるパターンで埋め尽くすようになる。ところがその4年後には方向を転換、初期のような具象的なイメージが再び現れるようになる。苦悩の中にあったポロックは、制作のペースも落ちていく。飲酒による自動車事故でその生涯を終えたのは、わずか44歳のときだった。
この展覧会には日本の美術館が所蔵する約30点のポロック作品が集結するのを始め、アメリカやドイツ、イギリス、オーストラリアから集めた重要作とあわせて約70点で構成される。また、ポロックのアトリエを再現、絵の具が飛び散った床まで忠実に復元し、彼の苦闘のあとをたどることができる。今後日本でこれだけの規模のポロック展が開かれることはないだろう、との声も。猛スピードで人生を駆け抜けた彼のすごみが感じられる展覧会だ。
text: Naoko Aono
生誕100年 ジャクソン・ポロック展
2月10日(金)〜5月6日(日)
東京国立近代美術館
東京都千代田区北の丸公園3−1
tel: 03-5777-8600(ハローダイヤル)
10時~17時(金~20時)
月休(3月19日、26日、4月2日、30日は開館)
http://pollock100.com/
《インディアンレッドの地の壁画》1950年
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Teheran Museum of Contemporary Art
《ナンバー9》1950年
セゾン現代美術館