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ひっくりかえる --Turning around--

ひっくりかえる --Turning around--

世界を「ひっくりかえす」ことを目論むアーティストたち

12 3/27 UPDATE

考えてみればこの数年間でいろんなことが「ひっくりかえって」しまった。金融危機、東日本大震災、原発事故、一連のできごとはこれまでの価値観を完全に転覆させたわけではないけれど、その足元を揺らがせている。新しい一歩を踏み出さなくてはならないようだ。そう考える人々の背中を押してくれそうな展覧会が開かれる。

「ひっくりかえる ーTurning aroundー」と題された展覧会には社会に対して積極的にメッセージを発信しているアーティストたちが参加する。Chim↑Pom(チン↑ポム、日本)は2005年に結成された6人のアーティスト集団。昨年は渋谷駅の岡本太郎の壁画『明日の神話』に福島原発事故を描いた絵を勝手につけたし、論議を巻き起こした。こういった社会のタブーや問題を真正面から扱うのが彼らのやり方だ。しかもアーティストだから、といった傍観者的態度ではなく、震災から1ヶ月後の福島原発に乗り込むなど、体を張って作品を作っている。

フランス出身のJRは昨年、世界を変える「価値あるアイデアの普及」をめざすTEDプライズを受賞し、注目を集めた。彼の作品の一つに、街角に人々の巨大なポートレイトを貼るというものがある。スラム街の女性たちの写真をその家(ほとんど小屋のようなものだが)の壁や屋根に貼ったり、壁を挟んで対立するパレスチナ人とイスラエル人のポートレイトをその壁に貼ったりするのだ。街に突然現れた巨大な顔は、弱いと思われていた女性の強さや、全く異なると思われているパレスチナ人とイスラエル人とが顔だけでは区別がつかないことなど、それまで人々が気付かなかったことをあらわにする。

ヴォイナ(戦争という意味)は2005年に結成され、現在5人で活動するロシアのアート集団。ロシア政権や警察、資本家たちを敵視し、アナーキーなアクションを起こしている。一例が「KGBに捕獲されたペニス/ヴォイナの65メートルのチンポ」と題された作品だ。旧KGB、現ロシア連邦保安庁の目の前にある跳ね橋の路面に、橋が上がるたびに立ち上がる長さ65メートルの巨大なペニスを描いた。文字通り「中指を立てる」ような作品だが、なぜかこれにロシア文科省主催の賞が与えられた。心が広いのか狭いのかよくわからない国だ。

「アドバスターズ」は反資本主義の活動家、カレ・ラースンが1989年にカナダで創刊した雑誌。名称はAd(広告)+busters(破壊者)に由来する。その名の通り、アメリカ合衆国の国旗の星の部分が大企業のロゴになった旗など、パロディや過激なグラフィックで消費社会や商業主義への批判を展開している。昨年起きた、ニューヨークの金融業界に抗議する「ウォール街を占拠せよ」も彼らの呼びかけによるものだった。

彼らの"作品"が直接、社会を変えることができるのかどうかはわからない。センセーショナルで挑発的な作品はときに「お騒がせ」と呼ばれて、彼らの意図とは違う解釈をされることもある。そんな騒動や誤解も含めて、見た者が何かを考えること。そこから変化への第一歩が始まる。

text: Naoko Aono

「ひっくりかえる ーTurning aroundー」

4月1日(日)〜7月8日(日)
ワタリウム美術館
東京都渋谷区神宮前3−7−6
tel: 03-3402-3001
11時〜19時(水〜21時)
月休(4月30日は開館)
一般1000円(会期中何度でも入場できるパスポート制)
http://www.watarium.co.jp/


1JR 28 ミリ、女性たちこそがヒーローより「プロヴィデンシアの貧民街」2008 リオ・デ・ジャネイロ 


2Chim↑Pom LEVEL 7 feat.「明日の神話」 2011 © 2011 Chim↑Pom 
Courtesy of Mujin-to Production, Tokyo 


3VOINA 「無血クーデター」 2010

4Chim↑Pom  Red card  2011  © 2011 Chim↑Pom 
Courtesy of Mujin-to Production, Tokyo