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Damien Hirst

Damien Hirst

人々を翻弄し続けてきたダミアン・ハーストのショッキングなアートと人生。

12 4/04 UPDATE

カットモデルのようにきれいに半分に切られてホルマリン漬けになった牛。ダイヤモンドをびっしりと貼り付けた人間の頭蓋骨。挑発的なアートで世間を騒がせてきたダミアン・ハーストの回顧展がロンドンのテート・モダンで開かれている。

彼が注目を集めたのはゴールドスミス・カレッジに在学中の1988年に自ら企画した「Freeze」展だった。1991年に初の個展を開く。それ以来、彼の作品は常にショッキングな話題を提供してきた。切り落とされた牛の頭にわくウジ虫が蝿になり、殺虫灯で殺されるという「A Thousand Years」は生と死のサイクルを象徴する。薬局のようなスペースの棚にカラフルな薬の瓶が置かれた「Pharmacy」では薬が頭、腹など身体の部位ごとに分類されて並ぶ。人体を機械のパーツのように扱う医学システム、ひいてはあらゆることをジャンル分けして理解しようとする思考への批評精神ともとれる。

今回の個展では上記の「Pharmacy」などの他、「In and Out of Love」が1991年に発表されて以来、21年ぶりに公開される。サナギが蝶になって羽ばたくが、砂糖と接着剤をつけたキャンバスにとまるとそのまま固められてしまうという作品だ。さらにタービン・ホールでは2007年の発表当時のレートで120億円という値をつけたことで話題になったダイヤモンドの頭蓋骨「For the Love of God」が無料で公開される(こちらは6月24日まで)。あの巨大な空間に比べると小さなオブジェだけれど、燦然と輝くダイヤモンドはその場のすべてを支配するはずだ。

ダミアン・ハーストは1995年以降、薬物とアルコール中毒に苦しんできた。自分では絵を描いたことがほとんどない、と公言する一方で2009年には絵画の個展を開き、イギリスの批評家たちに酷評されている。最近では世界一の資産を持つアーティストとしても話題になった。残酷さとねじれた諧謔が支配する作品と、アート界を翻弄しながら全力で走っているダミアン自身の生涯とを重ねて見るのもおもしろい。

text: Naoko Aono

『Damien Hirst』
開催中〜9月9日(日)
Tate Modern
Bankside, London SE1 9TG, UK
tel. (+44) 20 7887 8888
10時〜18時(金・土〜22時)
http://www.tate.org.uk/modern/

サメ
Damien Hirst
The Physical Impossibility of Death in the Mind of Someone Living  1991
© Damien Hirst and Science Ltd. All rights reserved. DACS 2011. . Photo: Photographed by Prudence Cuming Associates


Damien Hirst
Beautiful, childish, expressive, tasteless, not art, over simplistic, throw away, kid's stuff, lacking integrity, rotating, nothing but visual candy, celebrating, sensational, inarguably beautiful painting (for over the sofa)  1996
© Damien Hirst and Science Ltd. All rights reserved. DACS 2011. . Photo: Photographed by Prudence Cuming Associates


Damien Hirst
Sympathy in White Major - Absolution II  2006
© Damien Hirst and Science Ltd. All rights reserved. DACS 2011. Photo: Photographed by Prudence Cuming Associates