12 5/08 UPDATE
一見、どうということのない森の中の風景や岩場。休日、散歩に来る人も多いところだ。この写真が撮られたのは第一次世界大戦でオーストリア軍とイタリア軍が戦ったところ。そう聞くと、何気ない光景が違った色合いを帯びて見えてくる。撮影者はパオラ・ド・ピエトリ。1960年、イタリア出身の写真家だ。
穴が開けられていたり、不自然な溝が続いているのは、兵士が身を隠すためのトンネルや塹壕だ。地雷や爆弾、機銃掃射でえぐられたあともある。そこには木や草が生い茂り、凄惨な戦闘の様子は想像しがたい。
「今では地元の人々が平和にのんびりすごすオアシスになっている。その足元で100年前に起きた戦いやドラマを感じ取ることは難しい。知らない、ということが過去の暴力をなかったことにしてしまう」と作者は言う。わずかに残る痕跡が大きな意味を持っているのに、それに気づく人は少ない。
タイトルの「To Face」は軍隊用語で「敵に立ち向かえ」という意味。パオラ・ド・ピエトリの写真も見るものを、今につながる歴史に立ち向かわせる。かつてそこで起きた嵐のようなできごとが跡形もなく消え去っていることに気付くことから、歴史と今をつなぐ手がかりが見えてくる。
text: Naoko Aono
Paola De Pietri. To Face
5月17日〜9月30日
MAXXI
Via Guido Reni, 4/A
00196 Roma, Italy
入館料 11ユーロ
月休
11:00~19:00
土〜22:00
http://www.fondazionemaxxi.it/
Bosco Frattelle, Luserna
Forcella Fontananegra