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LADY DIOR AS SEEN BY

LADY DIOR AS SEEN BY

LADY DIORから広がる無限のストーリー。

12 5/08 UPDATE

ディオールのアイコン バッグ「LADY DIOR」。1995年に誕生した、ステッチのパターンとDiorの文字のチャームが特徴的なディオールの名作だ。ダイアナ妃が愛用したことでも知られるこのバッグをモチーフにしたアートが銀座で展示されている。

参加アーティストの一人、鬼頭健吾はLADY DIORの形はそのままに、結晶のようなモチーフと鏡を貼ったオブジェを制作。のぞき込むと、自分の姿が映る。
「バッグを見る女性の心の中に生まれる欲望を表現したいと思ったんです。欲望を感じている自分の姿を鏡で見ることで、そのことがより強調される」
バッグの形を変えなかったのは、そのフォルムが完璧だと感じたから。
「ロゴやシンボルマークではなく、ミニマルな幾何学模様でLADY DIORであることが一目でわかる。この模様自体が椅子の模様を引用した、というエピソードも面白いと思った。引用はアートの重要な手法の一つですから」

一方、受け継がれていく記憶や生活の象徴としてのバッグを表現したのは宮永愛子。彼女の作品は透明な四角い塊の中に、白いLADY DIORが包み込まれているというもの。透明なのは樹脂、LADY DIORの形になっているのはナフタリンだ。作品には底面に小さな穴があいている。ナフタリンはそこから少しずつ昇華して、おそらく数十年後にはなくなってしまう。制作時には樹脂の薄い層を毎日、少しずつ重ねていって作る。そのときできた小さな気泡も日々の記憶と一緒に封じ込まれている。
「色は違うけれど、琥珀のように時間が包まれていると言えるかもしれません。それも急に時間が止まって閉じこめられたというよりも、まどろんでいるうちにそのまま琥珀の中で時間の流れから忘れられたという感じ」

樹脂のそばに置かれたチャームもナフタリンで作られたもの。こちらは全体が空気にさらされているので会期中も日々昇華して小さくなり、ナフタリンはケースの内側で結晶に姿を変えていく。
「最終的には私が造形した形はなくなってしまうので、"消滅するアート"と表現されることもありますが、私自身は"変化していくアート"だと思っているんです」

形がなくなることではかなさを感じる人もいるけれど、宮永は「はかなくて弱いことは強くて頑丈なことと紙一重、変化とはしなやかな強さ」という。
「形はなくなってしまっても印象や人の記憶に形を変えて残る、それは強いアートだと思う」

展覧会には他に"パパラッチに狙われたセレブ"をモチーフにしたピーター・リンドバーグの写真や、爆発したかのように裂けてしまったオリンピア・スカリーのオブジェ、リアルな人間関係を連想させるナン・ゴールディンの作品が並ぶ。地下1階では映像作品の上映も。永遠のアイコンから無限のストーリーが広がる。

text: Naoko Aono

『LADY DIOR AS SEEN BY』
開催中~5月20日
東京都中央区銀座4−3−1 和光並木館1F
11:00~20:00
tel: 0570-050-121
入場無料

1KENGO KITO
2AIKO MIYANAGA
3PETER LINDBERG