12 7/05 UPDATE
アートといえば今や「何でもあり」。筆を使わずに絵の具を投げつけて描いたり、奇妙な服を着て歩き回ったり。そのルーツのひとつが関西を中心に活動していた「具体美術協会」(以下、「具体」)という前衛芸術集団だ。「具体」が結成されたのは1954年。その後、72年に解散するまで約60名の作家が会員として加わった。
彼らのアートは時代を先取りしすぎていたかもしれない。当時はもちろん、今でも「これがアートなの?」と首をかしげたくなるものもたくさんある。木枠に張った何枚もの大きな紙を破りながら走り抜ける。天井から吊り下げたロープにぶら下がり、足で絵の具を掻き回す。木立に渡したビニールに色水を入れ、カラフルな水の塊が空中をふわふわ揺れるのを見上げる。自動で動く101匹の犬のぬいぐるみが歩き回る。作品は美術館の壁に飾られるだけでなく、公園に置かれたり、舞台上で演じられることもあった。これは「具体」のリーダーだった吉原治良が会員たちに繰り返し、「人のまねをするな!」「誰もやっていないことをやれ!」と檄を飛ばしていたからなのだが、それにしても今から半世紀も前にこんな過激なアートの実験が行われていたとはちょっと信じられない気もする。
この展覧会は、東京で「具体」を総括的に紹介するものとしては18年ぶりのもの。作品だけでなく、当時の貴重な記録写真や映像が並ぶ。窓のような切り抜きがあるポスターや、のり付けされていて開くと紙が破れてしまう、という案内状も。何もかもが前衛的で、強烈な毒とユーモアとで味付けされている。うらやましくなるほどのパワーと熱気が還ってくる。
Text:Naoko Aono
『具体 ニッポンの前衛 18年の軌跡』
開催中〜2012年9月10日
国立新美術館
東京都港区六本木7−22−2
tel. 03-5777-8600(ハローダイヤル)
10時〜18時(金〜20時)
火休
http://www.nact.jp
松谷武判《WORK 65》1965年 兵庫県立美術館蔵
ヨシダミノル《Just Curve '67 Cosmoplastic》1967年 高松市美術館蔵
村上三郎による制作風景[小原会館・東京|1956年]