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第13回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展

第13回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展

建築と社会の「共通の場」を探す
ヴェネチアの国際建築展。

12 9/13 UPDATE

2年に一度開かれるヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展。今回の総合ディレクター、デヴィッド・チッパーフィールドは「Common Ground」(共通の場)というテーマを掲げた。建築家の間だけで議論を重ねるのではなく、プロフェッショナルな建築家と社会との対話の場を見つけること。建築をオープンなものにしてプロの建築家以外の人もプロセスに参加できるようにすること。それがこのテーマの目的だ。考えてみれば当然のことのようだけれど、残念ながら今まではそれが実現しているとは言えなかった。

この第13回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展で最高賞である金獅子賞を受賞したのが日本館だ。岩手県陸前高田市で建設中のコミュニティ・スペース「みんなの家」の設計プロセスを130以上の模型で見せる。設計したのはコミッショナーの伊東豊雄が選出した乾久美子、平田晃久、藤本壮介の3人の建築家だ。あわせて同地出身の写真家、畠山直哉が撮った震災前、震災後、そして今年6月の陸前高田の写真を壁面四周に展示している。

日本館の展示はもともと、陸前高田とは限らず被災地のどの場所にも適用できる「みんなの家」のプロトタイプをビエンナーレの会場に建設、会期終了後、被災地のどこかに移築する計画だった。しかし途中でさまざまな理由から陸前高田に実際に「みんなの家」を建て、その過程を見せることになった。

3人の建築家たちは「敷地が決まるまでは頭の中でいろいろなことが空回りしていた」(藤本)という。敷地が決まってから「人々の結びつき方、集まり方からイメージがわいてきた」(平田)。その結果、現在建設中の「みんなの家」は丸太が19本建てられて、その上に小さな展望台があるようなものになった。展望台があるのは町を見渡せることと、藤本らが敷地を訪れた際、別れ際に人々が見えなくなるまで手をふってくれたことから。丸太の柱は「奇跡の一本松」のもとになった松林などから着想された。

「この『みんなの家』には汎用性はないかもしれない」と畠山は言う。一言に東北といっても土地の地勢や天候、人々の暮らしぶりによって最適な建築の形は違ってくる、ということだ。

ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展には各国のパビリオンに与えられる金獅子賞の他に、プロジェクトに与えられる金獅子賞がある。今回受賞したのはベネズエラのカラカスにある「トーレ・ダヴィッド」という45階建てのオフィスビルのドキュメント。93年に完成直前で放棄されたこのビルはその後、貧しい人々によって不法占拠された。今では750世帯もの人々が暮らしている。住んでいるだけでなく、その中で床屋やフィットネスクラブまで営業している。その様子を建築ユニットのアーバン・シンク・タンクが調査、イワン・バーンの写真とともに展示しているのだ。このドキュメントはスイスの出版社、ラース・ミュラー・パブリッシャーズから「TORRE DAVID  Informal Vertical Communities」というタイトルで出版される。

展示会場では期間中カフェが運営されていて、カラカスのフードやドリンクを提供している。「一緒に食事をすることがディスカッションの第一歩」という考えからだ。コミュニティとは何か、都市計画の失敗をコミュニティがどう埋め合わせているのかを身体で実感できる。

ヴェネチアではビエンナーレ会場以外の場所でも関連企画が開かれている。とくにジョルジョ・チニ財団美術館の「Carlo Scarpa. Venini 1932-1947」とクエリーニ・スタンパリア美術館の「Viagem Sem Programa Drawings and Portratis」展は必見だ。前者はカルロ・スカルパがヴェネチアのガラス職人と組んで作ったガラス器、後者は建築家、アルヴァロ・シザが描いたポートレイトや旅先のスケッチなどのドローイング展。時間をたっぷりとって楽しみたい。

text: Naoko Aono

第13回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展
開催中〜11月25日

ヴェネチア(ジャルディーニ、アルセナーレ)
Giardini and Arsenale, Venezia
10時〜18時、月休
入場料 20ユーロ
http://www.labiennale.org/
日本館詳細
http://www.jpf.go.jp/venezia-biennale/arc/j/13/index.html

Carlo Scarpa. Venini 1932-1947
開催中〜11月29日

ジョルジョ・チニ財団美術館(La Stanze del Vetro)
Isola di San Giorgio Maggiore Venezia
10時〜19時、水休
入場無料
http://www.cini.it

Alvaro Siza. Viagem Sem Programa Drawings and Portratis
開催中〜11月11日

クエリーニ・スタンパリア美術館
Santa Maria Formosa, Castello 5252, 30122 Venezia
10時〜18時、月休
入館料 10ユーロ
http://www.querinistampalia.it

書籍「TORRE DAVID Informal Vertical Communities」
ラース・ミュラー・パブリッシャーズから9月発行予定
http://www.lars-mueller-publishers.com/

1日本館会場風景。畠山の写真を背景に130以上の模型が並ぶ。
画像提供:国際交流基金
写真:畠山直哉

2イワン・バーンが撮影した「トーレ・ダヴィッド」ドキュメント。
photo: Iwan Baan

3「Carlo Scarpa. Venini 1932-1947」展会場風景。スカルパがデザインしたガラス器が並ぶ。
photo Ettore Bellini