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マシュー・モナハン個展  哀れみの来襲 coup d' pietà

マシュー・モナハン個展 哀れみの来襲 coup d' pietà

もろくて強固な、矛盾に満ちたマシュー・モナハンの彫刻。

12 11/08 UPDATE

村上隆がKaikai Kiki Galleryを立ちあげたときから個展の開催を熱望してきたアーティスト、マシュー・モナハン。ギャラリーのオープンから4年、その願いがかなうことになった。

モナハンは現在40歳。ニューヨーク、ロサンゼルス、アムステルダムと世界各地を移動してきている。99年にはアーティスト・イン・レジデンスで九州に住んでいたことも。現在はロサンゼルスに腰を落ち着けている。

彼の作品は人体をかたどったオブジェ。が、制作時には写真や人形、実際のモデルなどは使わないのだそう。「自分にしか作れないものを作りたい。それは人の顔や体にあると思ったんだ」と彼は言う。そして、素材の扱いも独特だ。溶かした発泡スチロールとドローイングを施した折り紙を合体させたり、折った紙を型取りしてブロンズで鋳造したり。前者は見かけのわりにフラジャイル、後者は一見弱い紙のように見えて、金属の強固さで視線をはね返す。

彼が最近、もっとも大きな影響を受けたのはチベットとネパールに旅したときに見た彫像だという。「それは魂が宿るところとして使われていて、熱狂的な偶像崇拝の対象になっていた」。この旅のあとモナハンは、もし自分に何かパワーがあるとしたら、それはアートを通じて発揮されるものだと考えるようになった。

そのモナハンの彫刻はさまざまな形の台座に載せられている。彼は自分の作品を世界の残りの部分からきっちりとわけておきたい、と考えているのだ。彫刻と台座との間に生まれる緊張感も重要だ、と彼はいう。

今回展示される新作は今にも動き出しそうな、ダイナミックな力を内包している。でもその形を支えているのはささいな振動で壊れてしまいそうな、脆弱な素材だ。こんな矛盾をはらんだ彫刻なんて他にはない。村上隆がぞっこんのアーティスト、アジア初の個展は見逃せない。

text: Naoko Aono

『マシュー・モナハン個展 哀れみの来襲 coup d' pietà』
2012年11月16日〜12月22日

Kaikai Kiki Gallery
東京都港区元麻布2-3-30 元麻布クレストビルB1
11時〜19時
日・月休
tel. 03-6823-6038
http://gallery-kaikaikiki.com/

2012年11月16日
レセプションとアーティスト・トーク開催
18:00~オープニング・レセプション

19:00~アーティスト・トーク(ナビゲーター:村上隆)

1The Pale Dance
photo: Joshua White
2The Medivac
photo: Joshua White
3photo: Chika Okazumi