13 10/03 UPDATE
見ることはできても、触れることはできない。吉岡徳仁はその"光"を閉じこめたかに見えるさまざまな結晶を作品にしてきた。『吉岡徳仁 - クリスタライズ』は彼にとって公立美術館では初めての個展。自然結晶を成長させることで、自然とともに造形をつくり出す「Crystallized Project」を始め、彼が構想している建築プロジェクトに関連した作品など、多様な光が出現する。
「Crystallized Project」は吉岡が2007年にスタートさせたプロジェクト。これまでに結晶を椅子の形に成長させた「VENUS - Natral Crystal chair」や、薔薇を結晶化させた彫刻「Rose」などを発表してきた。「白鳥の湖」と題された新作の結晶絵画は結晶が成長していく過程で曲を聴かせ、その振動によって、一つの曲が一枚の絵画となるかのような作品だ。かつて、雪の結晶を研究した中谷宇吉郎は「雪は天から送られた手紙である」と言った。温度や湿度によって形や透明度が変わる雪の結晶は中谷にとって、空の様子を教えてくれる手紙だった。自然の力が生み出す"偶然の美"を引き出す吉岡の作品は人の手が及ばない神秘の次元を体現する。
この展覧会では光そのものを全身で感じる空間が作られる。吉岡は20代の頃から「虹の教会」という建築プロジェクトを構想してきた。この個展では550本ものクリスタルプリズムを積層させた、高さ約12メートルにもなるステンドグラスがアトリウムの空間に出現する。光に満ちた空間には、何が待っているのだろうか。
この他にも7つの糸から生み出される椅子「蜘蛛の糸」、ガラスのベンチ「Water Block」、さらには国内初公開となる作品や大型インスタレーションが展示される。吉岡にとっても観客にとっても、別の次元への転換点となる展覧会だ。
text: Naoko Aono
『吉岡徳仁 クリスタライズ』
10月3日〜2014年1月19日
東京都現代美術館
東京都江東区三好4−1−1
tel. 03-5777-8600(ハローダイヤル)
10時〜18時、月曜(10月14日、11月4日、12月23日、1月13日は開館、翌日休)、12月28日〜1月1日休
入場料1100円
http://www.mot-art-museum.jp/