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誰でも子どものころ、夜空を見上げてそこに何があるのか考えたことがあるだろう。1970年生まれのヴァンサン・フルニエはその子どもの心を持ったまま成長し、写真家・映像作家となった。現在パリを拠点に「Wallpaper」「GQ」などの雑誌や広告で活躍。LVMHルイ・ヴィトン・ファウンデーションなど世界各地の美術館に作品が収蔵され、映画「アメイジング・スパイダーマン2」に作品が登場するなど、注目を集めている。
DIESEL ART GALLERYで開かれる個展に出品されるのは3つのシリーズ。代表作「SPACE PROJECT(スペース・プロジェクト)」はスターシティ宇宙飛行士訓練センターやカザフスタンの「バイコヌール宇宙基地」などの宇宙開発に関する場所で撮影したもの。宇宙服や宇宙ステーションなどがどことなく懐かしい階調の画面に収められている。これら宇宙開発センターは撮影の許可を得るのに1年がかり、そして撮影が許されるのが2日間だけ、ということもあるという。国による宇宙観の違いも面白い。「ロシアでは宇宙は神のような神秘的な空間と考えられているが、アメリカでは科学的・合理的なアプローチによって分析し、理解するべきカオスだとみなされる。旧ソ連の映画監督、タルコフスキーの『惑星ソラリス』とキューブリックの『2001年宇宙の旅』の違いを思い出してもらえるとわかりやすいかもしれない」。フルニエの写真にはその差異も現れている。
ロボットがオフィスや街中、住宅など、ごく普通の日常生活のワンシーンに登場する「THE MAN MACHINE(機械人間)」では日本のロボット研究者とのコラボレーションによるものも多い。人間の姿に似せたロボットには親近感もわくけれど、どこかで違和感を感じるのも事実だ。この矛盾する感情の背後には1970年にロボット工学者、森政弘が提唱した「不気味の谷」という人間心理がある。ロボットの外見が人間に近づけば近づくほど親しみがわくが、人間そっくりになる、ある段階で急に不気味さを感じ、嫌悪感を抱くという説だ。フルニエの作品は科学の進歩と私たちの感情との関係を探る、興味深い研究の一環とも見える。
この展覧会で日本初公開になる「POST NATURAL HISTORY(続・自然史)」では生物の形自体は大きく改変していない、とフルニエは言う。が、写真をよく見るとテクスチャーやディテールが違っていて、現実には存在しない生物であることがわかる。それらは環境の変化に対応するために、人間が遺伝子を組み換えた、という設定だ。テクノロジーと時間、自然と科学、夢と想像と悪夢など、さまざまな問題を投げかける。
会期中、DIESEL ART GALLERYでは写真や映像、3Dスカルプチャーのほか、作品集なども販売する。連動企画として伊勢丹新宿店本館2階のセンターパーク/ザ・ステージ#2(ディーゼルのポップアップストア内)で8月27日から9月2日まで、DIESEL ART GALLERY未発表作品を展示。近未来から見た現代のような、時空のねじれたイメージが立ち現れる。
text: Naoko Aono
『ARCHEOLOGY OF THE FUTUREー未来の考古学』
会期:2014年8月22日〜11月14日
11時30分〜21時
不定休
場所;DIESEL ART GALLERY
東京都渋谷区渋谷1−23−16 cocoti B1F
tel. 03-6427-5955
入場無料
http://www.diesel.co.jp/art/
「ヴァンサン・フルニエによるサイン会開催」
会場:DIESEL ART GALLERY
日時:8月23日、16時~18時
*会場で販売される書籍・ポスター購入者が対象。
SOKOL KV2 Space Suit, KAZBEK seat from a Soyuz rocket, Warehouse, London, United Kingdom, 2009.
RABBIT [Oryctolagus cognitivus] Very intelligent rabbit.
Asimo #2 [Honda], RMCA, Brussels, Belgium, 2009.
©Vincent Fournier