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年に一度開かれる映像とアートの祭典、「恵比寿映像祭」。7回目の今回はこれまでメイン会場となっていた東京都写真美術館の改修休館を機に、恵比寿ガーデンプレイスのホールや日仏会館なども会場になる。映像の上映やインスタレーション、資料の展示だけでなく、資料の展示だけでなく、パフォーミング・アートとのコラボレーションや35ミリフィルムの爆音上映など、体に直接響いてくるような仕掛けも増えた。テーマは「惑星で会いましょう」。インターネットなどの発達で情報が氾濫し、世界を直観的に捉えることが難しくなってきた今、もっとリアルに世界と向き合う手がかりを見つけようというものだ。
今回は、過去に近未来SF的な作品を作ってきたポーランド出身の現代アーティスト、パヴェウ・アルトハメルやキッチュでクレイジーなビデオ・アートで注目を集めたアメリカのライアン・トラカートゥンらが出品する。ザ・ガーデンルームではスペシャル上映として「宇宙人東京に現わる」、「AKIRA」などSFの秀作3作品が今や貴重となった35ミリフィルムで「爆音上映」される。上映プログラムには60年のキャリアを持つ実験映画の巨匠、ケン・ジェイコブスや、ドキュメンタリーとフィクションの境界を問う鈴木光ら1980年代生まれの若手アーティストの作品が登場する。
「Yebizoラウンドテーブル」と名づけられたパネル・ディスカッションでは1968年に創刊された「ホール・アース・カタログ」について語り合う。当時のカウンター・カルチャーやヒッピー・カルチャーに大きな影響を与えた伝説の雑誌だ。72年の終刊から約40年たった今、メディア、サブカルチャーやハッカー文化との関連を踏まえ、テクノロジーの可能性とリスクを軸に議論が交わされる。
若手映画監督、瀬田なつきの短編映画「5windows」は5つの短編映画が集まった作品。4つの物語が屋外で上映され、それぞれが重なりあった5つめの物語を屋内で見るという構成だ。今回は新たに恵比寿で撮り下ろした「5windows eb」と「5windows is」の2作品を加え、恵比寿特別編として展示する。観客は映画を見るために街を歩き、その場所を改めて発見することになる。ホンマタカシの映像による新作インスタレーション「最初にカケスがやってくる」は人間に潜む野生を暴くもの。彼が知床半島で鹿狩りを撮った写真「Trails」を発表したあと、数年にわたって撮影された映像が素材になっている。
一度限りのライヴも見逃せない。山口典子「KEITAI GIRL」のパフォーマンスや、久野ギルがゲストミキサーにKEN ISHIIを迎えたライヴ、ジョナサン・ミナード&ジェームズ・ジョージによるインタラクティヴ・ドキュメンタリー「クラウズ」のプレゼンテーションなどが予定されている。
会期は10日間だけれど、濃いものがぎっしりと詰まっている。映像とパフォーマンスとディスカッションと、多彩なものがこの先の旅路へと導いてくれる。
text: Naoko Aono
第7回恵比寿映像祭「惑星で会いましょう」
会期:2015年2月27日〜3月8日
会場:ザ・ガーデンホール、ザ・ガーデンルーム、日仏会館ホール・ギャラリー、恵比寿ガーデンプレイス センター広場、恵比寿地域文化施設およびギャラリー ほか
tel. 0570-012-378(10:00~18:00、会期以外の土日祝を除く/会期中は、開催時間通り)
10時〜20時(最終日は18時まで)
入場無料(一部のプログラムは有料)
http://www.yebizo.com/
ホンマタカシ《最初にカケスがやってくる》2015
ヴィデオ・インスタレーション(会場:日仏会館ギャラリー)
《宇宙人東京に現わる》1956(監督:島耕二)/配給:株式会社KADOKAWA
スペシャル上映:爆音SF[35mm](会場:ザ・ガーデンルーム)
ダンカン・キャンベル《新しいジョン》2009Courtesy of Duncan Campbell and LUX, London
(会場:ザ・ガーデンホール)
バヴェウ・アルトハメル《共同作業》2009[参考図版]
(会場:ザ・ガーデンホール)