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高級ブランドや高名な作家の作品など、手に入れたいと思ってもそれができないとき、人は「ニセモノ」を作ってそのかわりにしようとする。ニセモノをホンモノらしく見せるためにウソにウソを重ねることも。そんなニセモノの歴史をたどる展覧会が開かれる。
出品されるニセモノの中でももっとも古いものに属すると思われるのが、縄文時代の「腕輪」だ。貝輪をたくさん装着したような腕輪は、海で採れる貝のかわりに粘土や石で作られたもの。主な移動手段が徒歩だった当時、山間部では貝を手に入れるのが難しかった。ニセの腕輪をつけた縄文人は「これ素敵でしょ」とまわりの人に自慢したのだろうか。フェイクのダイヤで身を飾る現代人とあまり変わらないように思える。
室町時代末期から江戸時代前期にかけて東南アジアから輸入され、茶道具として珍重された安南陶器のニセモノには、発掘現場をねつ造したビデオまで作られた。客を信用させるため箱書や鑑定書が偽造されることがあるが、念には念を入れよ、ということなのだろう。
書画のニセモノも多い。海外でもときどき「知られざるレオナルド・ダ・ヴィンチの作品を発見!」などというニュースが報じられて真偽が話題になるが、日本でも雪舟、池大雅など人気絵師のニセモノがよく出現する。雪舟は京都から山口に移り住み、池大雅は京都で活躍したため、それぞれゆかりの地にニセモノが多い。その地での有名人が"利用"されるのだ。
江戸末期から明治初期の欧米で人気だった日本製のニセモノが「人魚のミイラ」だ。展覧会には上半身が猿、下半身が魚といういかにも人魚らしい物体が展示される。こういったミイラは和歌山などで盛んに製造され、欧米に輸出された。ペリーの航海日誌にも人魚の記述がある。またシーボルトがその輸出に関わっていた、などの記録もある。展覧会ではなぜ人魚のミイラが人気だったのか、また人魚のミイラの作り方も紹介する。
そのほか、安酒を極上の酒の味に変える江戸時代の秘密のレシピ、天目茶碗の中でもとくに高級とされた「建盞」(けんさん)と呼ばれる中国産の茶碗のコピー、発掘で出土した鋳型を参考に、当時と同様の技法で復元製作した銭貨などが並ぶ。中にはホンモノも混ざっているから油断できない。精巧に作られたニセモノを前にすると、この創意工夫やエネルギーを他に向ければいいのに、とも思う。人間の欲望や、それをめぐる駆け引きがかいま見える展覧会だ。
text: Naoko Aono
企画展示「大ニセモノ博覧会−贋造と模倣の文化史−」
会期:3月10日〜5月6日
会場:国立歴史民俗博物館
千葉県佐倉市城内町 117
tel. 03-5777-8600(ハローダイヤル)
9時30分~17時
月曜休(3月30日、5月4日は開館)
入場料830円
http://www.rekihaku.ac.jp
ニセモノの安南陶器(個人蔵)
ピルトダウン人(偽化石)(個人蔵)
人魚のミイラ(国立歴史民俗博物館蔵)