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高橋コレクション展 ミラー・ニューロン

高橋コレクション展 ミラー・ニューロン

鏡のように時代を映す日本の現代アート。

15 4/06 UPDATE

アートには作る、見ることのほかに「集める」という楽しみもある。アートを買って、コレクションするのだ。以前はどこで買っていいのかわからない、値段が書いてなくて不安、という声も多かったけれど、お気に入りのギャラリーでプライスリストを見せてもらって悩む、という楽しみを知ったらなかなか後戻りはできない。精神科医の高橋龍太郎さんはそんな楽しみを30年も前から味わってきた。長い間かけて大切に集めてきたアートは、今では日本のアートシーンの流れを物語る貴重な"証言者"だ。それぞれの作家の重要作品を網羅する彼のコレクションが東京オペラシティ アートギャラリーで展示される。

高橋氏はこれまでにも「ネオテニージャパン」や「マインドフルネス」といったテーマでコレクション展を開催してきた。今回のテーマ「ミラー・ニューロン」は他者の行動を見て、鏡のように自分も同じ行動をとっているかのように反応する神経細胞のこと。イタリアのジャコモ・リゾラッティが1996年に発見した。他者への共感や、模倣行動に関係しているとも考えられている。高橋氏は「アリストテレスは、芸術は自然を模倣するとして、模倣(ミメーシス)を人間の本質であると評価した」という。日本のアートにとって、1000年もの昔から本歌取り、見立て、やつしなど "模倣"は重要なファクターだった。近代美術・現代美術においてはさまざまな形で西洋美術の"模倣"が行われている。模倣から生まれたアートからまた別の作品が、と合わせ鏡のように"模倣"が続くこともある。こんな状況がアートを深く、複雑なものにしていく。

今回展示されるのは高橋氏がコレクションを始める契機となった草間彌生のほか、収集が本格化した90年代以降の作品が中心だ。会田誠、淺井裕介、Chim↑Pom、西尾康之、ヤノベケンジら国内はもちろん、海外でも注目を集める作家の作品が並ぶ。さらに60年代末に登場した「もの派」と呼ばれるベテラン作家たちの作品も。名和晃平が高橋氏のために制作した最新作「PixCell-Lion」はこの展示が初公開になる。日本の現代美術の進化のプロセスが楽しめる。

text: Naoko Aono

「高橋コレクション展 ミラー・ニューロン」
会期:2015年4月18日〜6月28日
会場:東京オペラシティ アートギャラリー
東京都新宿区西新宿3-20-2
tel. 03-5777-8600(ハローダイヤル)
11:00〜19:00(金・土は〜20:00)
月曜休(5月4日は開館)
入場料(一般)1200円
https://www.operacity.jp/ag/exh175/

1草間彌生 KUSAMA Yayoi《レペティション A, B》/ 1996 / フォトコラージュ、ペイント、紙 / 24.3×33.4 cm / Photo:KIOKU Keizo / ©Yayoi Kusama Courtesy of KUSAMA Enterprise, Ota Fine Arts
2会田誠 AIDA Makoto《ジューサーミキサー》/ 2001 / アクリル絵具、キャンバス / 290.0×210.5 cm / Photo:KIOKU Keizo / ©AIDA Makoto Courtesy of Mizuma Art Gallery
3舟越桂 FUNAKOSHI Katsura《遠い手のスフィンクス》/ 2006 / 楠に彩色、大理石、革、鉄 / 110.0×90.0×40.5cm / ©FUNAKOSHI Katsura, Courtesy of Nishimura Gallery
4森村泰昌 MORIMURA Yasumasa《第三のモナ・リザ》/ 1998 / カラー写真プリント / 77.0×54.5 cm (framed: 99.5×77.0 cm) / ©Morimura Yasumasa Courtesy of ShugoArts