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20世紀を代表する現代美術界の巨匠、サイ・トゥオンブリー。日本の美術館でも作品を所蔵しているところはあるが、国内でまとまった回顧展が開かれたことはなかった。その彼の、日本の美術館としては初めての個展が原美術館で開かれる。生前のサイ・トゥオンブリーが自らセレクトに関わった約70点の作品だ。
サイ・トゥオンブリーは1928年アメリカ・ヴァージニア州の出身。ボストンやニューヨークでアートを学んでいたときにロバート・ラウシェンバーグらと知り合う。シカゴの画廊などで作品を発表した後、1953〜54年に従軍、暗号の作成と解読に携わる。1957年からイタリアに拠点を移し、2011年にローマで没するまでニューヨーク近代美術館やロンドンのテート・モダンなど、世界的な美術館で個展を開いた。
今回日本で展示されるのは紙に描いたドローイングやモノタイプ(金属板やガラス板に描画し、インクや絵の具が乾く前に転写する版画技法の一種。通常の版画と違い、1〜2枚しか刷ることができない)による作品。画面には何かをひっかいたような線や、絵の具をぶつけたような跡が残る。そこにギリシャ・ローマ神話や詩などに由来する手描きの文章や記号が添えられていることもある。高度に抽象化された俳画のようでもある。
よく子供のいたずら描きとも評される彼の絵画だが、晩年のインタビューで彼は「初期には描き始めてから構想を変えることもあったけれど、最近では取りかかる前に頭の中で完成形ができあがっている」と語っている。また「描くときは早いけれど準備には時間をかける。描き始めるまでに1年ぐらいかかることもある」とも言っていた。即興的に見えるけれど、そこに至るまでには長い時間の蓄積があるのだ。
今回の展覧会では東京の原美術館のほか、群馬にある別館ハラ ミュージアム アークの特別展示室「觀海庵」でもサイ・トゥオンブリーの作品が展示される。磯崎新設計の觀海庵は、床の間と違い棚のある書院造を引用した和風の空間だ。そこにトゥオンブリー作品が古美術と対比する形で展示される。東洋の人間から見ると前衛書道と通じるものも感じられるトゥオンブリー作品が、日本美術と出合ってどのような顔を見せるのかも楽しみだ。
text: Naoko Aono
「サイ トゥオンブリー:紙の作品、50 年の軌跡」
会期:2015年5月23日〜8月30日
会場:原美術館
東京都品川区北品川4-7-25
tel: 03-3445-0651
11:00〜17:00(祝日を除く水曜〜20:00)
月曜、7月21日休館(7月20日は開館)
入館料 1100円
「サイ トゥオンブリー×東洋の線と空間 」
会期:2015年5月29日〜9月2日
会場:ハラ ミュージアム アーク 特別展示室 觀海庵
群馬県渋川市金井2855-1
Tel: 0279-24-6585
9:30〜4:30
木曜、7月6日〜17日休館(8月は無休)
入館料 1100円
http://www.haramuseum.or.jp
「Untitled(無題)」 1953 年 48×64 cm モノタイプ、紙 ©Cy Twombly Foundation / Courtesy Cy Twombly Foundation
「Untitled(無題)」 1961/63 年 50×71cm 鉛筆、色鉛筆、ボールペン、紙 ©Cy Twombly Foundation / Courtesy Cy Twombly Foundation
「Untitled (無題)」 1970 年 70.5×100 cm ワックスクレヨン、ペンキ、紙 ©Cy Twombly Foundation / Courtesy Cy Twombly Foundation