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捨てられていたり、友だちの家でいらなくなった椅子をもらってきて分解し、別々の椅子の部品を組み合わせてまた椅子を作る。イタリア出身、ロンドン在住のマルティーノ・ガンパーはこうして1日に1脚ずつ、100脚の椅子を作った。2007年、ロンドンで発表された100脚の椅子は大きな話題になる。そのうちの99脚は世界各地を巡回、ガンパーがその土地で新たに100脚目の椅子を作ってきた。日本で開かれる個展でも開催地の丸亀で作った椅子が並ぶ。丸亀在住の人から椅子を譲り受け、まだ誰も見たことのない椅子を作り出すのだ。
彼が作り出す椅子はとてもチャーミングだ。別の椅子の座がつながって背もたれになっていたり、スツールにステッキのようなものがついていたり。一瞬、どこに座っていいのかわからないものあって、どう座るか考えるのも楽しい。1日で1脚を作る、そのスピード感が椅子の思いがけない表情を生む。
ガンパーは14歳のとき家具を作る職人のところに弟子入りして家具造りを学ぶ。その後プロダクト・デザインを学び、デザイナーのマッテオ・トゥンのスタジオで働いた。しかし自分にはインダストリアル・デザインは合わないと感じたのだそう。「いいアイデアがいっぱいあっても、クライアントにノーと言われたらそれまでなんだ」。そこで彼はロンドンのロイヤル・カレッジ・オブ・アートに入学、デザイナー、メーカー、アーティストとして活動している。彼はアートやデザインといった既存の境界線は気にしていないのだ。
ガンパーは友人たちを招いて食事を振る舞うのが好きだそう。この椅子を作ることは友だちを集めて料理を作ることと似ている、と彼は言う。彼は料理や椅子を作るプロセスや、みんながそこで一緒になる感覚を楽しんでいるのだ。
text: Naoko Aono
『マルティーノ・ガンパー 100日で100脚の椅子』
会期:2015年6月13日(土)〜9月23日(水)
会場:丸亀市猪熊弦一郎現代美術館
香川県丸亀市浜町80-1
tel: 0877-24-7755
10:00〜18:00
会期中無休
一般 ¥950