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絶対に見ることのできない展覧会とはどんなものだろう? 福島第一原発周辺、帰還困難区域内で2015年3月11日から始まった「Don't Follow the Wind」展は開催場所が封鎖区域内だから、通常は見に行くことができない。この展覧会を見られるようになるのは封鎖が解除されたあとだ。それは3年後になるのか、10年後か、それとももっと先のことなのか。いつ来るともわからない観客のために作られたアートは、今もひっそりと佇んでいる。
ワタリウム美術館で開かれる「Don't Follow the Wind − Non-Visitor Center」展は、見に行くことができないこの展覧会のサテライト展示。"非ビジターセンター"という名称は観光地などにある案内所「ビジターセンター」からとられている。
参加作家は福島の展示と同じだ。中国当局との軋轢で注目を集めるアイ・ウェイウェイ、社会問題(ときにはタブー)に鋭く切り込むChim↑Pom、人間が遠隔操作される架空の場でモラルがどのように働くかを検証する作品を作っているエヴァ&フランコ・マッテスら12組の作家が「Don't Follow the Wind」の関連作や過去作品を展示する。グランギニョル未来、小泉明郎、宮永愛子、アーメット・ユーグら、他の参加作家も見逃せない顔ぶれだ。さらにドキュメントとして、園子温による映像インスタレーションが展示される。
この展覧会は発生から4年たった今も深刻な状況が続く原発事故に対する、アーティストたちのステイトメントだ。彼らは声高に原発反対を叫ぶわけではないけれど、この問題を私たちはどう考えるのかを問いかける。
ワタリウム美術館ではこの「Don't Follow the Wind − Non-Visitor Center」展のあと10月24日から11月29日まで、ソーシャルなアートで知られるフランスの作家、JRの個展を開催する。パリ郊外で起きた暴動やアメリカの移民局からインスピレーションを得た作品が並ぶ。2つの展覧会から世界が抱える問題とそれに対峙するアーティストの姿が見えてくる。
text: Naoko Aono
「Don't Follow the Wind − Non-Visitor Center」
会期:2015年9月19日〜10月18日
会場:ワタリウム美術館
東京都渋谷区神宮前3-7-6
TEL: 03-3402-3001
11:00~19:00(水〜21:00)
月曜休(9月21日、10月12日は開館)
一般1000円
http://www.watarium.co.jp
Chim↑Pom LEVEL 7 feat.『明日の神話』2011
(c) Chim↑Pom Courtesy of the artist and MUJIN-TO Production, Tokyo
エヴァ&フランコ・マッテス「Plan C」2010
Public intervention, Chernobyl, Manchester Photo by Tod Seelie