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「カールステン ・ ニコライ bausatz noto ∞」

「カールステン ・ ニコライ bausatz noto ∞」

人間と機械の偶然の出合いが生むアート。

15 12/08 UPDATE

2015年4月の「シンプルなかたち」展(森美術館)や札幌国際芸術祭2014、大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレなど、日本でも作品を見る機会の多いカールステン・ニコライ。アルヴァ・ノト名義でサウンド・アーティストとしても活躍し、坂本龍一やマイケル・ナイマンらとのコラボレーションでも知られている。その彼が東京で開いている個展は音と光がテーマだ。展覧会初日には出品作《bausatz noto ∞ - color vinyl display, 1998/2015.》を使った、カールステン・ニコライ自身によるパフォーマンスも行われた。機械音やホワイトノイズのような音、風の音のように聞こえるものなどを自在に組み合わせたサウンドが次々と展開するスリリングなものだった。

この《bausatz noto ∞ - color vinyl display, 1998/2015.》は1998年に制作した作品の新しいバージョン。4台のターンテーブルとレコードの組み合わせだ。レコードの表裏にはそれぞれ8本ずつ、合計16本のループトラックが刻まれていて、観客は好きなレコードを組み合わせてターンテーブルにのせ、それを回して自由に音を作ることができる。ニコライは「ループに興味がある」のだそう。最初に制作したものではレコードは黒一色だったが、今回の新作では12色に。それぞれの色にふさわしいサウンドが録音されているという。「ピンクならピンキーな音、という具合だ」とニコライは冗談を飛ばす。

「モジュロールを組み合わせていろんなものを作れるレゴみたいな作品だ。こうして人が触れる、ということが重要なんだ。この作品ではレコードはツールにすぎない。僕や観客がそれでプレイするまでは、作品は完成しないんだ」

ギャラリーのもう一つのスペースには、移動する光の点をスキャナーで読み込ませた作品が展示されている。光が動いていくときに読み取るので、ときどき光が分解されて7色になっていたりする。自然界の偶然と人間が発明した機械が不思議な出合いをする、ニコライらしいアートだ。

text: Naoko Aono

「カールステン ・ ニコライ bausatz noto ∞」
会期: 開催中〜12月23日
会場: アートフロントギャラリー
東京都渋谷区猿楽町 29−18 ヒルサイドテラス A棟
tel: 03-3476-4869
11:00〜19:00、月休
入場無料
http://artfrontgallery.com


Carsten Nicolai《bausatz noto ∞ - color vinyl display, 1998/2015.》
photo by Julija Stankeviciene
Courtesy of Galerie EIGEN + ART Leipzig/Berlin and The Pace Gallery