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陽の光のかげで

陽の光のかげで

遠い天体からインスピレーションを得たアート

16 1/21 UPDATE

これまでも度々日本を訪れているイギリス出身のアーティスト、ダレン・アーモンド。2014年に水戸芸術館で開いた、映像インスタレーションなどによる個展も好評だった。その彼の新作を、SCAI THE BATHHOUSEで見ることができる。

"時間"がアーモンドの作品のテーマの一つだ。たとえば夜、月の明かりで撮影したシリーズは15分から30分、あるいはそれ以上の露光時間をかけている。その間に水や木の葉は揺らいで不思議な影ができる。水戸芸術館では壁一面にフリップ式の時計を並べたインスタレーションも発表した。また彼は日本だけでなく北極圏やシベリアなど、世界各地を旅している。「知らない土地に行くことで意識が変わり、自分の本能に忠実になる」と彼は言う。こうして生まれた作品は普段は意識することのない時間や空間に、思いがけない角度から光をあてる。

今回の個展でメインになるのは壁一面に拡大投影された太陽の映像だ。これはロサンゼルスのグリフィス天文台の太陽観測望遠鏡で見た太陽をiPhoneで撮影したもの。会場ではこの映像が唯一の光源となって展示室内を照らす。ほかの作品は時間をテーマにしたものだ。《In Reflection》は上下に二分割された数字がばらばらに並べられたもの。フリップ式時計を分解して、表示板だけを並べたかのようだ。時が移り変わっていく途中のようにも感じられるけれど、一定の時刻を示すことはない。《Timescapes》はハッブル宇宙望遠鏡がとらえた星雲や恒星系のイメージから描かれたもの。何年もかけて地球に届く光がアーモンドによって重ねられ、複雑な層を描く。

個展のタイトルは「陽の光のかげで」。アーモンドは以前、「我々は言葉によって思考するのではなく、言葉の影によって思考するのである」というロシアの作家、ウラジミール・ナボコフの文章を引用した「In the Shadow of Words」という個展を開いたことがある。光だけでなく、それが生み出す影にも注目しながら見たい展覧会だ。

text: Naoko Aono

『陽の光のかげで』
会期:2016年2月5日〜3月5日
会場:SCAI THE BATHHOUSE
東京都台東区谷中6-1-23 柏湯跡
tel : 03-3821-1144
12:00〜18:00
日・祝・月休
入場無料
http://www.scaithebathhouse.com


1Darren Almond《Hand-held Sun》2015年. 映像プロジェクション、サイズ可変. Courtesy the artist and SCAI THE BATHHOUSE.
2Darren Almond《Star Chart (Blue) IX》2014年. アクリル絵具、ハンドメイド・シルクスクリーン、101 x 100 cm