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森万里子の作品は私たちを無限に広く、無限に続く次元の中に連れ出してくれる。たとえばSCAI THE BATHHOUSEで開かれる個展に出品されるのはエキピロティック宇宙論、ブレーン宇宙論と呼ばれる宇宙論に基づくものだ。これらの理論では、宇宙は高次元の時空に浮かぶ三次元の膜であるという。膜どうしが引き合って衝突すると大爆発が起こり、これがビッグバンのエネルギー源になる。この理論に従えばビッグバン以前も宇宙は存在していたことになり、宇宙には始まりも終わりもなく、永遠に膨張と収縮を繰り返す。この理論は森が長年取り組んできた、輪廻転生の概念などと高い親和性を持つものだ。森はこの理論を取り入れてメビウスの輪のような形状を持つ作品を作った。
展覧会のタイトルになっている「サイクロイド」とは、円がある規則で回転するときに描く軌跡を総称したもの。その中でも円が別の円の外側に接したまま滑らずに回転したとき、回転する円の円周上にある一点が描く軌跡を外サイクロイドと言う。それぞれの円の大きさによって花びらのような、あるいは広がる音波のような模様ができる。今回の個展で展示される最新作《Cycloid》はこの外サイクロイドが描くパターンを取り入れたもの。複雑な形が広がっていくアルミニウムの彫刻がパールのように輝く。
森は2010年から「FAOU」というプロジェクトに取り組んでいる。6大陸に一つずつ、半永久的な作品を設置するというものだ。1つ目の作品は宮古島の七光湾に設置した《Sun Pillar》。このプロジェクトに関連して、この個展では作品《Ring》を展示する。
森万里子のアートには生命や天体の生死のサイクルを越えて循環するエネルギーが満ちている。彼女の作品を通して遠い宇宙の先や過ぎ去った遙か過去を感じてみたい。
text: Naoko Aono
森万里子『Cycloid/サイクロイド』
会期:2016年3月11日〜4月23日
会場:SCAI THE BATHHOUSE
東京都台東区谷中 6-1-23 柏湯跡
tel: 03-3821-1144
12:00 - 18:00
日・月・祝日 休廊
入場無料
http://www.scaithebathhouse.com/
森万里子《Cycloid III》2015年
森万里子《Cycloid IV》2015年