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日本のものづくりの水準の高さには定評があるけれど、その良さをもっと知ってもらいたい。日本各地で見た工芸の手技の精緻さ、美しさに驚き、その一方で認知度や後継者の不足など、さまざまな問題を抱えているのを目の当たりにした元サッカー日本代表、中田英寿はそう考えた。彼がそのために取り組んでいるのが「REVALUE NIPPON PROJECT」だ。
このプロジェクトでは毎年、陶磁器や和紙などの素材から一つを選び、評論家や学芸員などアート・デザインの専門家を中心にしたアドバイザリーボードが工芸家やアーティストなどのチームを提案する。彼らの自由な発想による作品で工芸を活性化し、新たな造形の可能性を探ることが目的だ。
今回の展覧会ではこの「REVALUE NIPPON PROJECT」から生まれた約30点の作品が一堂に会する。陶磁器の赤絵、風合いのある和紙、しなやかな竹、小紋などを染める型紙、英語では「ジャパン」とも称される漆の5つの素材を操る職人たちとアーティストの奈良美智やテレジータ・フェルナンデス、写真家の鈴木理策、建築家の妹島和世、鈴野浩一、禿真哉、テキスタイルデザイナーの須藤玲子らがコラボレーションしている。一般には初公開となるものも多く、その丁寧な仕事と大胆なデザインに、私たち日本で暮らす者も目から鱗が落ちる気がする。
お互いに普段はあまり接点のない職人とクリエイターがジャンルを超えて出会い、コラボレーションする。その中ではさまざまな苦労もあったことだろうが、仕上がりはさすがものづくり大国ニッポン、といいたくなるできばえだ。微細なところまでゆるがせにしない職人のプライドと見事なデザインに、日本のクリエイティビティの新しい未来が見えてくる。
text: Naoko Aono
REVALUE NIPPON PROJECT展
中田英寿が出会った日本工芸
会期: 4月9日〜6月5日
会場:パナソニック 汐留ミュージアム
東京都港区新橋1−5−1 パナソニック東京汐留ビル4F
tel: 03-5777-8600(ハローダイヤル)
10:00〜18:00
水曜休(5月4日は開館)
入館料:一般1000円
http://panasonic.co.jp/es/museum
《UFO鍋》
植葉香澄、奈良美智、中田英寿
2010年 茨城県陶芸美術館蔵
©植葉香澄、奈良美智、中田英寿
©Junichi Takahashi
《Life size polar bear in papier mache》
橋本彰一、片山正通、NIGO®
2011年 一般財団法人 TAKE ACTION FOUNDATION蔵
©Junichi Takahashi
《風雲波輪》
起正明、新立明夫、白洲信哉
2014年 一般財団法人 TAKE ACTION FOUNDATION蔵
©Junichi Takahashi