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山谷佑介&松川朋奈「at home」

山谷佑介&松川朋奈「at home」

「痕跡」を通し、他人の存在や日常の不可視に迫る
写真と絵画による二人展

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写真家、山谷祐介と画家、松川朋奈による二人展「at home」が、6月4日(土)~ 7月2日(土)までユカ・ツルノギャラリーで開催される。

山谷佑介はパンクバンドの活動を経たのち一転写真に目覚め、国内外を放浪し、様々なアンダーグラウンド・コミュニティで過ごす中で写真を実践してきた。デビュー作となった自費出版の写真集「Tsugi no yoru e」では、はかない日々を捉えたストレートなスナップ写真が注目を集め、その後の活動でも、クラブの床に原寸大の床写真を貼り、アルコールや靴跡などの痕跡を記録した「ground」、有効期限が切れたポラロイドフィルムを使ったポートレート「Usebefore」など、様々な角度から写真にアプローチをしている。

本展「at home」では、昨年家庭を持ち、人間の営みと切り離すことができない「家」に興味を持ち始めた山谷が、真夜中の住宅街で不可視光線に反応する赤外線カメラを使い、家の中を覗いてみたいという欲求とともに、人間の痕跡らしきものを捉える可能性を探求する。一方、松川朋奈は、同世代の女性たちの癖や生活習慣などが、身の回りの事物に残す「痕跡」に注目し続けてきた画家だ。一見、ハイパーリアルな作風だが、事物の忠実な再現をするのではなく、モチーフのクローズアップや筆跡を残さないフラットで美しい表面などを絵画上で再構成することで、人間性の影である残痕を新しい価値へと転換させることを試みている。山谷の写真、松川の絵画という全く異なる方法と、それぞれ別々な角度から、不在の痕跡ではなく、その痕跡とともに生き続ける人々の営みへの執拗な関心から生み出された二人の新作で構成される本展は、他人の存在や日常の不可視な側面を露にする。

なお、会場となるユカ・ツルノギャラリーでは、ファッションフォトやヌードフォトを中心に、女性との向き合いに熱を注いできた写真家、沢渡朔の個展「Rain」が同時開催され、沢渡朔写真集「Rain」(国書刊行会)も出版される。初日となる6月4日には、3人の作家を囲んでのレセプションも開催されるが、他人への興味を、痕跡を通し追求する山谷と松川の「at home」と、カメラが捉えた世界そのものである沢渡の「Rain」の違いも見どころの一つとなりそうだ。

text:Akihiro Hayashi

山谷佑介&松川朋奈「at home」+ 沢渡朔「Rain」
会期:2016年6月4日(土)〜7月2日(土)
オープニングレセプション: 6月4日(土)18:00-20:00
開廊時間: 火〜土 11:00 - 19:00
会場:ユカ・ツルノギャラリー
東京都江東区東雲2-9-13 2F
tel:03-3520-1700
http://yukatsuruno.com

1Yusuke Yamatani 山谷佑介
house#001, 2016, archival pigment print

2Tomona Matsukawa 松川朋奈
I still think of it「今でも時々思い出すの」, 2016, 80.3 x 116.7cm, oil on panel