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メキシコで遺言により死後50年にわたって封印されていたフリーダ・カーロの遺品。2004年に半世紀ぶりに姿を現した遺品の管理者は、地球の反対側に住む写真家、石内都にその撮影を依頼した。石内は遺品が保管されているフリーダの家、通称「青い家」に向かう。それから3週間、フリーダが身につけた民族衣装やコルセット、靴、化粧品や薬品と向き合い、丹念にフィルムに収めていった。その写真が日本では初めて本格的に公開される。
石内はそれらの遺品を「青い家」の庭など、自然光が入るところで撮影した。女性が画家として自立することなどまだ一般的でなかった時代に絵を描き続け、病気や事故で痛む体と戦い続けた彼女には"強い女"のイメージがつきまとう。でも石内の写真にはフリーダのやわらかい、優しい部分が写し取られているようだ。服はていねいに繕われて、大切に着ていたことを思わせる。コルセットには愛らしい模様がペイントされて、華やかに飾られている。鮮やかな色が美しい靴は左右の高さが違う。フリーダの足は左右で長さが違っていたからだ。でもそれに臆することなく着飾って人前に出る、そのおしゃれ心が愛おしい。
遺品の中で化粧品や薬はこれまであまり発表されることがなかったもの。小さなケースに入った口紅だけでなく、痛み止めのモルヒネの瓶もある。華やかに飾られたコルセットや色鮮やかな民族衣装、くっきりと彩った唇の裏側で彼女は格闘を続けていたのだ。
6月下旬には遺品を撮影する石内を追ったドキュメンタリー映画『フリーダ・カーロの遺品ー石内都、織るように』の上映もある(東京:アップリンク、大阪:シアターセブン)。街に骸骨のオブジェや扮装があふれる「死者の日」の祭りなど、生と死がとても近いところにあるメキシコで石内がどのようにフリーダに近づいていったのかが、ていねいにすくいとられている。石内が撮ったフリーダ関連の写真のうち、未発表のものを中心にした写真集『フリーダ 愛と痛み』(岩波書店)の刊行も(6月17日)。私たちの知らないフリーダ像が浮かび上がる。
text: Naoko Aono
石内都展『Frida is』
会期:6月28日〜8月21日
会場:資生堂ギャラリー
東京都中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビルB1F
tel. 03-3572-3901
11:00〜19:00(日・祝〜18:00)
月曜休
入場無料
http://www.shiseidogroup.jp/gallery
Frida by Ishiuchi
2012/2016 ©Ishiuchi Miyako
Frida Love and Pain
2012/2016 ©Ishiuchi Miyako