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『金氏徹平のメルカトル・メンブレン』

『金氏徹平のメルカトル・メンブレン』

役割を交換し、接続する展覧会。

16 8/01 UPDATE

2009年、30歳の若さで横浜美術館で個展を開いてから7年。金氏徹平が丸亀市猪熊弦一郎現代美術館で開催中の個展はさらにパワーアップしている。今回のキーワードの一つは「接続」だ。いろいろなモノや人が本来の場から切り離され、あるいはとどまったままで接続している。

彼はこれまでコーヒーの染みやたらした樹脂など、コントロールできないものを素材にしてきた。今回はその"コントロールできないもの"というファクターに人間も加わる。展覧会の顔とも言うべきタイトルは小説家、長嶋有に依頼した。その結果、日本語と英語とで違うタイトルがついている(英語のタイトルはTeppei Kaneuji's "ZONES")。会場ではデザイナーである父に制作を依頼した椅子が置かれている(観客も自由に座れる)。4冊組のカタログはそれぞれデザイナーも判型も違う。極めつけは、他者が制作した作品が並んでいることだ。出品作品の中には金氏ではなく、俳優の青柳いづみをはじめ、金氏の兄、カタログのデザイナー、キュレーターなどが制作したものがある。インストラクションは金氏によるものだが、こんなふうに人は役割を交換し、モノが組み合わされているのだ。

こういった場合、モノならコラージュ、人ならコラボレーションという表現もある。が、金氏にとってはどちらもしっくりこないようだ。それよりは"接続"と言ってしまったほうが似つかわしいように感じられる。最終的な調和を目指さず、接続という行為そのものが目的であるようなアートだ。

展覧会は7月17日に幕を開けたけれど、作品はそれで完成ではない。会期中に数回のイベントが行われ、作品はその度に姿を変える。最終日の11月6日にcontact Gonzoと金氏による最後のイベント「スカルプチャーのオバケ(積み木、雪だるま、バリケード)」が行われて最終形となる。

美術館の外、まちなかにも『丸亀の街のZONESのholes』という展示が行われる。丸亀城天守やうどん店、カフェに金氏のオブジェや映像が出現する。美術館の展示と関連しつつも、 それぞれの空間で、美術館では味わえない角度から作品と出会える。丸亀に近い高松や直島では「瀬戸内国際芸術祭2016」が開催中。あわせて鑑賞しながら瀬戸内の夏を満喫しよう。

text: Naoko Aono

『金氏徹平のメルカトル・メンブレン』
会期:開催中〜11月6日
会場:丸亀市猪熊弦一郎美術館
香川県丸亀市浜町80−1
tel.0877-24-7755
10:00〜18:00
会期中無休
一般950円
http://mimoca.org

『丸亀の街のZONESのholes』
丸亀城天守、本格手打ちうどん つづみ、Café la taupe(カフェ・ラ・トープ)の3カ所。詳細は下記を。
http://www.mimoca.org/ja/events/2016/07/17/1539/


1「四角い液体、メタリックなメモリー」
2014年
撮影:守屋友樹
2『ボイルド・デイドリーム(コラージュ・ロマン)#14』
2016年
3『ゴースト・イン・ザ・リキッドルーム(化粧品)#14』
2016年