09 6/17 UPDATE
その名のとおり、スチャダラパーのボーズが、自宅に溜まったいろんなものを「捨てる」その姿を追った抱腹絶倒のドキュメンタリーが本書。
思えばかなり昔から、僕らはいろんなものを「溜め込んで」いた。あらゆる書籍、雑誌のバックナンバー、レコード、CD、スポーツ・ギア、服、靴......そして地獄の引っ越し! 「捨てる技術」だかなんだか、そんなことを他人事のように述べた使えない本は数多い。本書はその真逆に位置する。「捨てる!」と立ち上がったボーズの姿を、インタビュー形式で追ってゆく。
「なぜ、それを捨てるのか」。そして「捨てることができるのか」。捨てる前に悩むボーズの姿......ハニカムを見ているあなただったら、「とても他人事とは思えない」のではないか(筆者もその一人)。写真も豊富で素晴らしい(&おかしい)。
「ビデオの棚を前に苦悩する」「謎のゲーム箱と本棚」「半端フィギュア」「行かない試写会案内状」「役目を終えたCD‐R」「トリセツ」(以上、目次より)。なかでも秀逸だったのが、漫画についての一節。とあるコミックス(それが何かは読んでのお楽しみ)を捨てる、というボーズが、その理由をインタビュアーに告げる。「漫喫に揃っていると思うから」と言うボーズなのだが、だからといって、漫喫には行かないらしい。「そこにある」と思えば安心だから、自分で持っていなくてもいい、と思えるようになった──つまりこれが「脱アーカイブ宣言」! 21世紀型のライフスタイルなのか? 年とっただけなのか? 歴史の終わりなのか?
その答えはまだわからない。ともあれ、思わず膝を打ちつつ、「頑張れ、頑張れ」といつのまにかボーズを応援してしまう、そんな一冊。
Text:DAISUKE KAWASAKI (Beikoku-Ongaku)
『明日に向かって捨てろ!!』
BOSE
(双葉社)
1,575円[税込]