09 7/31 UPDATE
いま一番面白く、オルタナティヴで、もしかしたら最前衛の「メタ・漫画」となっているのかもしれないような、そんな作品がコレ。
「僕(=作者自身)」の日常を描いたエッセイ・コミックが本作なのだが、スポットが当てられているのが、「漫画家としての自分」であるところが新しい、というか「ややこしい」。こんなのが通常パターンだ。「編集者と打ち合わせした『僕』」が、打ち合わせ後に「あんなこと言わなきゃよかった」と落ち込んで、妻になぐさめられる......まあ、なんてことはない、日常のひとこまだ。「それを漫画に描かないのであれば」!
想像してみてほしい。たとえば、アメリカンTVには「リアリティ番組」という定番企画がある。そこでもし、「『リアリティ番組を作っている人々の姿』をとらえたリアリティ番組」なんてものが、あったとしたら? そんなものは、あり得るわけがない?──そうかもしれない。しかし、それをたった一人で(厳密には、妻をアシスタントにして)描いている漫画がこれなのだ! であるから本作は、一定期間連載されては、休止して、しばらくしてまたスタートする、という形で描き進められている。連載時および前回の描き貯め時の「僕の日常」をネタとして溜め込んでは、それがまた「あらたなエピソード」となるわけだ。まるで「鏡に映った自分の姿」を映すための鏡を自分の後方に立てたところ、合わせ鏡の中で無限に像が連鎖してゆくかのように......
こんな「メタ構造」を保たせているのが、なんといっても、主人公「僕」のキャラクター。とにかく自意識過剰。猜疑心が強く、あらゆることを邪推、「上手く立ち回ろう」として墓穴を掘っては自己嫌悪。そして毎回卑屈になる(でもベーシックに尊大)......胸に手をあててみなくとも、およそ「クリエイティヴな作業」に関わっている人なら全員が、「自分と似ている......」と感じるのではないか(すくなくとも、僕はそうだ)。そんなクリエイターのダークサイド(のみ?)を注視したコメディとしても絶対に歴史に残るはずの傑作。現在、コミックスは第二巻までが発売中。そして週刊モーニング誌上で連載続行中!
Text:Daisuke Kawasaki(Beikoku-Ongaku)
『僕の小規模な生活』
福満しげゆき・著
(講談社 モーニングKC)
1巻:780円/2巻:740円[ともに税込]