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もういちど読む山川世界史

もういちど読む山川世界史

高校の教科書を一般向けに再構築した世界史読本

10 1/07 UPDATE

一年のはじまりに、こういう本をパラパラやるのもいいのではないか。おそらくまた、いろいろと激動するだろう2010年。よく考えてみれば「新しいディケイド」のスタート地点でもあるこの年が「いったいどうなるのか」。あるいは、「いまはどんな時代なのか」。そうしたことに思いを馳せる際の注意事項として、昔の人はいいこと言った。「未来を知るには、まず歴史から学ぶべし」と。
 
本書は去る2009年、かなり話題となったロングセラーの一冊。高校の教科書として定評ある「山川の世界史」をベースとして、一般向けにアレンジされた本書、これが滅法面白い。そして、歴史が「とてつもなくわかりやすい」。えっ教科書かよ、と引いてしまった人は、ちょっとそのトラウマは横に置いといて、虚心に読めば楽しめること間違いなし!──というわけで、高校で勉強した人も、しかなった人も、等しく魅了してしまった一冊が本書なのだ。

歴史とはドラマの宝庫だ。ゆえに、あらゆるドラマは歴史からの影響でその大半が形づくられている。だから例えば、テレビや映画を見ていて、「これの史実ってどうだっけ?」と思ったとき、本書が身近にあると実にありがたい。あるいは、海外旅行で名所旧跡を訪れる際の楽しみが十倍増になること請け合い。スタティックで、偏向せず、誠実に記述された「山川節」ゆえ、そういった各種の「読み」に実にフラットに対応できる内容となっている。

残念ながら、日本という国は、ちょっとまあ近現代にいろいろあったもので、「歴史について見解をもつ」ことが「政治性や思想性を表明すること」とイコールと見なされるきらいが強い。司馬遼太郎や坂本龍馬に心酔していないと非国民呼ばわりされそうなムードが、年々強くなっている。不況のせいですね、きっと。
 
そんな風潮のなか、古代アレキサンドリアや、黄金時代のフィレンツェに意識を飛ばしていると、ことのほか楽しく感じられるのは僕だけではないはず。『1Q84』の青豆さん(および村上春樹本人)も、子供時代は「世界史マニア」だったそうだ。そんな指向性をもつ人ならば、手にとって悪いことはひとつもない、そんなすぐれた一冊が本書だ。

Text:Daisuke Kawasaki(beikoku-ongaku)

『もういちど読む山川世界史』

「世界の歴史」編集委員会・編
(山川出版社)
1,575円[税込]