10 12/24 UPDATE
ついに(こんなものまで)出た!という一冊がこれだ。過去25年間にリリースされたアメリカン・インディー・レーベルの7インチ・シングルのみを「これでもか」と並べたのが本書。ある程度の規模のレーベルから、ほとんど個人運営の「どインディー」まで、わけへだてなく、きちんと対象化してキュレーションして、並べられている様は圧巻。300枚以上の色とりどりの7インチが、ここにある。
ここに載っている盤を、ある程度僕は持っている。であるから、その内容(音)が玉石混淆であることもわかる。が、なにより、その「DIY精神」の集積は、まさにフォーク・アートと呼ぶにふさわしい美しさをはなっている、と感じざるを得ない。自宅のガレージでクルマをいじるように、日曜大工のように、裏庭で仲間とバーベキュー・パーティを開くように──まさに「ドゥ・イット・ユアセルフ」方式で、つぎからつぎへと「レコード」が生み出された時代が、アメリカにはあった。
レーベル数など、いったいいくつあったやら。一千や二千はあったのではないか。90年代をとおして広がっていった草の根ムーヴメントが、こうしていま、きちんと考察されたということを讃えたい。「可触なる音」という書名はまさに言い得て妙、ネットが世の隅々まで広がりきる前、その伸張と歩を同じくして隆盛をきわめた、ひとつの時代の記録といえるのが本書だ。
そもそもこのブームを引き起こしたとされる(自主制作レコードのつくりかたを広めた、とされる)レーベル、シンプル・マシーンズの創設者クリスティン・トムソンや、アンフェタミン・レプタイルのトム・ヘーゼルマイヤーらがエッセイも寄せています。
text:Daisuke Kawasaki(Beikoku-Ongaku)
「Touchable Sound」
Tom Hazelmyer, Sam Mcpheeters 共著
Brian Roettinger 編集
(Soundscreen Design)洋書
3,980円[税込]