11 10/03 UPDATE
ありそうでなかった一冊、と言っていいのではないか。タイトルどおり、東京23区内の公園を、とにかくコンパクトに紹介したものが本書。この「コンパクトに」というところが重要で、23区内の庭園型公園のうち、「有名である」と考えていいものすべてを、(一部の例外を除いて)基本的に見開きで紹介している。その見開きには、公園内の略図、施設案内、アクセス情報ほか、その公園を特徴づけているようなポイントが、簡潔な短文で記されている──これが、文庫サイズの一冊のなかに、多数おさめられている。巻末には、それらの公園で出会えるだろう鳥や花のリストも掲載されている。
というわけで、これは非常にすぐれた「散歩の供」と言える一冊なのではないか。文庫サイズでコンパクトなので、いつもカバンのなかや上着のポケットに入れておいて、移動先でちょっと空き時間ができたときには、近場の公園をチェックしてみる、という使いかたが、まず考えられるだろう。外回りが多い職種に就いている人なら、持っていて損はないような気がする。圧倒的に暇──というか、自由時間が多い人にも、お薦めだ。あるいは意外に、カメラマンにとっては、手近な撮影場所の一覧としても重宝するかもしれない。
東京は、たとえばニューヨークのように、街の構造と公園が不可分のものとして有機的に結合してはいない。地震や空襲などがあったせいで、腰を据えて都市計画を進める機会を逸してしまったから、という言い訳をよく耳にはするが、本当のところは、わからない。
しかし、それでもなお、「東京のような街だからこそ」ここに挙げられた公園のうちのいくつかが、まるであらゆる人々のための生命維持装置のように重要であるということを、僕は実感をもって知っている。そんな実感がある人だったら、手にとらざるを得ない一冊だろう。
text:Daisuke Kawasaki(Beikoku-Ongaku)
「東京23区の有名公園散歩」
スマートライフクラブ・編
(新人物文庫)
750円[税込]