honeyee.com｜Web Magazine「ハニカム」

デザイナー宮下貴裕の日常におけるリアリティを表した「（タカヒロミヤシタザソロイスト.）TAKAHIROMIYASHITATheSoloIst.」。2012S/Sにあたる「#005.」では、いくつかの新シリーズが展開している。その１つが『eARTh dye™』。染色に古代の壁画などで使用していた天然の顔料を用いたことで、その時々の条件で微妙に異なる仕上がりとなり、各アイテムにはいわゆる「一点モノ」としての価値が付加されていく。

左に並ぶディアスキンのジャケットは、アウトドアのウェアをモチーフに、ユニークな解釈でリエディットしている。ポケットはカンガルー、フードはホースと部分ごとに異なる革を用いつつ、スウェードの裏面にはクラシカルな「plaid」のインクジェットを施した。さらに端革を使うことで、一点ごとに異なる個性をつくり出すことに成功している。右側のワークシャツでは、パートごとに、縫い糸の材質から糸調子、運針、縫製のテクニックを使い分けるなど、意図的なパッカリングやパンクを生み出す工夫によって、より味わい深い表情となっている。

メンズファッションの大きなパラダイムシフトの最中で、トレンドに流されない宮下の揺るぎないスタンスは、創造性を高めながら緩やかなペースでクリエイションを拡張し続けている。

photo: Masaki Sato
text: Tsuneyuki Tokano