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アンダーカバー初の作品集の出版を記念して、デザイナーの高橋盾氏がトークショーを開催した。聞き手は、雑誌「QUOTATION」の編集長で、同誌においてアンダーカバー特別号を刊行したこともある、ファッションジャーナリストの麥田俊一氏。それぞれの立場から互いに刺激を与えあってきた二人が、今年で26年目を迎えるアンダーカバーの歴史を振り返った。
アンダーカバーを初期から知る麥田氏がベストとして挙げたコレクションは、2007年春夏シーズンの"PURPLE"。それまでの"アンダーカバーらしさ"にとらわれない表現に、麥田氏は衝撃を受けたそう。高橋氏は、「パリという世界レベルの舞台で勝負するため、そこに基本としてある"フェミニン"や"セクシー"といった要素を取り入れました」と語る。このコレクションを境に、クリエイションの方法も変わっていった。「それまで、パッチワークを多用した"SCAB"(2003年春夏)やベーシックな服を引き伸ばした"LANGUID"(2004年春夏)など、一つのコレクションを一つのテーマで通すコンセプチュアルなアプローチを取っていました。しかし、物事の移り変わりが早くなるにつれ、そのやり方が合っていないように感じ、コレクションの中に様々なアイデアを取り入れるようになったんです。最近はショー自体にもう慣れていて、どういうものを作ってどういう風に見せていくかといったことに不安を感じずに取り組むことができています」。
最近の自身の服装について麥田氏が聞くと、「今はもう、無理して窮屈な服を着ることはないですね。リラックスした服を着ています」と答える高橋氏。しかし、その"リラックス"というキーワードは、アンダーカバーのクリエイションに反映されている。「メンズコレクションでは、それでも自分が"着たい"と思う服を作っています。その一方で、ウィメンズコレクションは、新しい表現を発表する場です」。また、ドールメイキングや映像制作など、ファッションデザイン以外の活動もこれまで行ってきた彼だが、今回の作品集のカバーには、自身が描いた油絵を使用している。油絵は、昨年、ほぼ未経験の状態から描きはじめたそうだ。この表紙に象徴されるように、作品集には、常に進化を続け、自身を更新していくアンダーカバーの尽きることのない探究心とイマジネーションが詰まっている。
photo: Kentaro Matsumoto
text: Ryu Nakaoka
作品集「UNDERCOVER」 8,800円[税抜]
Rizzoli刊
www.undercoverism.com