honeyee.com｜Web Magazine「ハニカム」

ニューヨークのストリートカルチャーから派生したグラフィティ／ストリートアート。これまでにも、いわゆる"ボム"という行為を切り口としその閉ざされた世界を描いた作品は存在したものの、この『INSIDE OUTSIDE』ほどグラフィティ／ストリートアート"シーン"を切り取るという点で優れたフィルムにはそうそうお目にかかれない。

登場するメンバーは、街頭に飾られた広告モデルの額に赤いスプレーで点を打ち"殺す"ことでその広告が持つ力を剥奪する"ヴィジュアル・アタック"という手法で知られるパリのZEVS。廃材を使ってあらゆる場所に住居を建設すると同時に消費を拒否しながら自らが生きることで現在の消費社会を痛烈に批判する北欧のADAM&ITSO。“都会の山岳部隊”と名乗り、高層ビルの頂上に自らの証であるタグを残し続けるブラジルのPIGMEUSなどなど、各人表現の手法も拠点もバラバラであるが、そこに共通するのは危険を冒しながらも"ストリート"にこだわり続けるという点。

我々の暮らす社会と密接にリンクした“メディア”ともいうべきストリートを舞台に彼等が発するメッセージとは何なのか？そしてメインストリームの社会とストリートアートの共存の難しさ、また古典的なアート業界のシステムに組み込まれることへのジレンマといった彼等の抱える悩みや苦悩を通して知る現代社会が抱える問題。それら様々な視点からグラフィティ／ストリートアートを捉え、今の姿をテンポ良く描いた会心のドキュメンタリー。DVDの発売は7月4日。8月にはEXPANSIONからWネームTシャツもリリースされます。合わせてお楽しみ下さい。

Text:Daisuke Noda