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ニューヨーク,アイラブユー

ニューヨーク,アイラブユー

多国籍多人種の監督たちによる
オムニバスラブストーリー

10 4/06 UPDATE

超豪華キャストもさることながら、クセ者ぞろいの監督チョイスで唸らせた『パリ、ジュテーム』('06)に続く、都市映画アンソロジー第2弾。

それにしても監督の人選が絶妙だ。登場順に名前を挙げると......『太陽の少年』『鬼が来た!』そして日本未公開ながらブッとんだ傑作『陽もまた昇る』を監督した中国の名優・姜文(チアン・ウェン)。インドとアメリカを股にかけて活躍する『モンスーン・ウェディング』『その名にちなんで』のミーラー・ナーイル。『Love Letter』等が世界中で愛されている岩井俊二。監督としてもキャリアを重ねるアルジェリア系ユダヤ人の血を引くフランスの中堅俳優イヴァン・アタル。ハリウッドのヒット・メイカーであるブレット・ラトナー。双子の兄のアルバートと共同で黒人映画にとどまらぬ強烈な作品を放ち続ける『フロム・ヘル』『ザ・ウォーカー』(そして『AKIRA』実写版の噂もある)のアレン・ヒューズ。ボリウッドと英米で活躍する『エリザベス』のシェカール・カプール。言わずと知れた女優ナタリー・ポートマン。ドイツのトルコ移民二世で脱国境者映画を撮り続けるファティ・アキン。『そして、ひと粒のひかり』でコロンビアから麻薬を密輸する女性を描いたジョシュア・マーストン。そしてこれらのエピソードのブリッジ的な部分を演出し、このオムニバスを一幅のタペストリのようにまとめてみせるのが、数多くの名タイトル・デザインを手掛けてきた「ビッグ・フィルム・デザイン(旧称:ボールスマイヤー&エヴァレット)」の総帥ランディ・バルスマイヤーだ。
 
前作パリ篇もかなりレベルが高かったが、今回はそれ以上にハズレなし。典型的ブロックバスター監督で、正直僕自身はまったく評価していないブレット・ラトナーのような監督でさえ、いつも以上の才気を発揮しているのはちょっとした驚き。
 
でもここではあえて僕個人が気に入ったエピソードを数篇挙げてみよう。
 
まずは、古いホテルを舞台にしてカメラも演技もずば抜けて優美なシェカール・カプール篇。黒人青年と白人少女のヌーヴェル・ヴァーグ的スケッチではあるが現代NYならではの画面外の物語を豊かに想起させるナタリー・ポートマン篇。異宗教者間のあいだに秘められた熱い感情がたぎるミーラー・ナーイル篇(ここではナタリー・ポートマンが主演)。洒落た言語バトルとフェティッシュなエロさが楽しいチアン・ウェン篇。最後の最後に現れるクリスティーナ・リッチの存在に世界が揺れる岩井俊二篇。エロティックな意識の流れがいいアレン・ヒューズ篇。異文化世界を見る目が透徹したファティ・アキン篇。......って、あれ? ほとんどじゃん(笑)。ま、それほど出来がいいってことだ。
 
注目すべきはやはり、多文化がせめぎあい、混淆する都市としてNYを捉えることの面白さだろう。それをニューヨーカーではない多国籍多人種の監督たちが、それぞれの国籍にさほどこだわることなく描いているのが、文化的洗練を感じさせてまたいい。なんでも第3弾は上海篇とか。楽しみにしていましょう。

Text:Milkman Saito

『ニューヨーク,アイラブユー』

監督:岩井俊二、シェカール・カプール、ナタリー・ポートマン、ブレット・ラトナー、イヴァン・アタル、チアン・ウェン、ファティ・アキン、アレン・ヒューズ、ジョシュア・マーストン、ミーラー・ナーイル、ランディ・バルスマイヤー
出演:オーランド・ブルーム、クリスティーナ・リッチ、ナタリー・ポートマン、アンディ・ガルシア、ヘイデン・クリステンセン、シャイア・ラブーフ、レイチェル・ビルソン、ブレイク・ライブリー 、マギー・Q、ロビン・ライト・ペン、ジェームズ・カーン、ジョン・ハート、ジャスティン・バーサ、イーサン・ホーク
原題:New York, I Love You
製作国:2009年アメリカ映画
上映時間:103分
配給:IMJエンタテインメント + マジックアワー

大ヒット上映中!

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