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レギオン

レギオン

「人類 vs 天使」が繰り広げる
壮絶アクション・スリラー

10 6/08 UPDATE

悪魔や悪霊が人間を滅亡へと導く映画は山ほどあるが、これはチト違う。まあ、見た目はほとんど同じなんだけど(笑)、相手が悪魔とは逆の「天使」であるってところがアホらしくも面白い。
 
夜の闇、雨のLAにいきなり天上から降りてきたタトゥーだらけの黒い天使。いきなり翼をバサァァッと拡げて、それをナイフで自ら切除し、傷跡を自分で縫いだすという暴挙!(演じてるのが『ダ・ヴィンチ・コード』でも苦行僧演ってたポール・ベタニーだから、そのMっぷりに笑える)。それからなんと韓国系の銃砲店に無断侵入して大量の武器を強奪、十字の形に壁をブチ抜き(笑)駆けつけた警官をぶっ殺してパトカーで逃走するのだっ!! なんとも気合いの入ったギャングスタぶりに(ベタニーには『ギャングスター・ナンバ-1』という快作もあったし)、もしや悪魔に寝返った堕天使か?...と誰もが思うがさにあらず。
 
ここで場面は一点、狐につままれたような気分になる。モハベ砂漠の中にぽつんと建つ、うらびれたダイナー「Paradise Falls」。......ってことは、「失楽園」と同じような意味だから、自分の店にこんな名前つける亭主がそもそもどうかしていないはずがない。案の定、オーナーは妻に逃げられ、贈り物のライターを後生大事にしている引きずりオヤジ(デニス・クエイドだからもうそんな感じ満点)。その息子は他の男の子供を孕んだウェイトレスにぞっこんの、親父にさえヘタレと思われてるいい歳こいた純情男(ルーカス・ブラック)。まあ、辺鄙な場所ではあるけれど、ときどき通りがかりの客はやってくるのであって、今日も数人、ワケあり気味のヒトビトが数名いる。そんな中、突然通信が途絶え、まるで悪魔憑きのような老婆が現れ、迫り来る黒雲は蝿の集団だし......と大変なことに(笑)。そこに思いっきりヤバい感じでやってきたのが冒頭のMっ気のあるギャングスタ! 

主人が問う。「お前、誰だ?」
男「マイクルだ」
 
あぁぁぁあっ! 字幕では「ミカエルだ」なんてなっちゃってるけどそりゃあ駄目! やっぱ英語風にマイクルじゃないと洒落が成り立たない。そう、銃器点不法侵入強奪警官殺傷男は大天使ミカエル! 彼は「失楽園」に居合わせた面々に奪った武器を供給する。夜の闇が深まるにつれ、クルマでどんどんやってくる「まんまゾンビ」なやつたち! いや、彼らは生ける死人でも悪魔憑きでもないのだ。憑かれてることは憑かれてるけど、憑いてるのは悪魔でなくって天使! どうやら"あの方"が、「最近の人間ども、もうどうしようもないから滅ぼしちゃいなさい」とノアの大洪水以来の強権発動したらしい。そこで、「あんたの言ってること、筋が通ってねぇよっ!」と反抗、人類に加担することにしたのが大天使ミカエルなのだ。
 
いっぽう"あの方"に従順な盟友・大天使ガブリエルは天使軍を地上に派兵、人間どもに憑依させて(見た目はまんまゾンビになるけど)人類存続の鍵を握る"救世主"を一斉に襲撃してきたってワケ......えっ? 救世主って、誰?!?!
 
そんなわけで、人類にしてみればホントいい加減にしてくれよ的なアルマゲドンが、砂漠の真ん中のダイナーでおっ始まるのだっ! でも、店の中で繰り広げられる人間ドラマは、古くは『駅馬車』『リオ・ブラボー』、ちょい新しくは『要塞警察』、最近では『ミスト』的な匂いがするもの。大天使さんたちのフルメタル装備も見事なもので、活劇映画の興奮を堪能させつつもあまりに壮大なアホらしさで爆笑させまくってくれるわけ。監督スコット・スチュアートは、『アイアンマン』等の視覚効果監督出身でこれがデビューらしいけど、いやあなかなか「映画」ってものを判っていらっしゃる。
 
しかしねぇ......それにしても暇をもてあました"あの方"は、生きとし生けるものをどこまでもお試しになるのだろうか。いやホント、迷惑だっつーの。天使もツライね、親分が気まぐれだとさ。同情しちまいますよ。南無阿弥陀仏。

Text:Milkman Saito

『レギオン』

監督:スコット・スチュワート
脚本:スコットスチュワート、ピーター・シュリンク
出演:ポール・ベタニー、ルーカス・ブラック、デニス・クエイド、タイリース・ギブソン、チャールズ・S・ダットン、エイドリアン・パリッキ、ケイト・ウォルシュ
原題:Legion
制作国:2010年アメリカ映画
上映時間:100分
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

大ヒット上映中!

http://www.legion.jp/