10 7/02 UPDATE
どうもここ最近、「アメリカン・コメディには客さんが入らない」という"定説"みたいなものが日本に根づいてしまった空気がある。哀しいことだ。
たとえばアダム・サンドラーやウィル・フェレルのような、アメリカでは超ビッグ・スター、マネーメイキング・スターの作品だってDVDスルーになりがちな昨今、そのスルーの憂き目をなんとか切り抜けて本作が劇場公開されることになったとは、いやあ目出度い。ただでさえ大物キャストがひとりも出ていないにも関わらず、だ。
なんせこの作品、結構なお墨付きがある。歴代コメディ映画史上、最高興行収入達成! 2009年度全米興行成績第6位!(『アバター』『トランスフォーマー2』『ハリー・ポッター』『トワイライト/ニュームーン』『カールじいさんの空飛ぶ家』の次)そして、ゴールデン・グローブ賞(コメディ/ミュージカル部門)作品賞受賞!
なぜこんなにウケたのか? どうしてこんなに評価が高いのか? お話の発端はバチェラー・パーティ。アメリカン・コメディではよくネタになる、結婚直前の花婿を囲んでの、独身サヨナラ大騒ぎ無礼講パーティだ。参加者は新郎のダグ(ジャスティン・バーサ)以下、教師のフィル(ブラッドリー・クーパー)と歯医者のステュ(エド・ヘルムズ)、そして婚約者の弟でかなりの変人アラン(ザック・ガリフィアナキス)。モノ判りのいい婚約者の父親(ジェフリー・タンバー)に高級ベンツを借りて向かったのはラスベガス。さあ一晩、酒とギャンブルとおネエちゃんで騒ぎまくるぞ! とホテルの屋上で乾杯してから約12時間......。
気がつけばいつの間にか朝。どういうわけかホテルの部屋の中。でもあたり一面荒れ果てて何故かニワトリが歩き、バスルームにはでっかい虎(!)、クローゼットには赤ん坊(!!)、歯医者のステュの前歯が一本ない。それに一番の問題は明日に結婚式を控えた新郎ダグが行方不明だってこと!!! 残された3人はキレイさっぱり記憶が飛んでいる。
いったい何が起こったんだ? まずはなんとかして花婿を見つけ出さなきゃ! ってことで最悪の二日酔い(=ハングオーバー)の中、挙式までの数時間で謎は解明できるか? 無事に花ムコは見つかるのか??
ところが謎は解けるどころか、ますます混迷の度を深めていく。フィルの腕にはなぜか病院の腕章が。きっと手がかりがあるからとにかくその病院へ行こうとホテルの駐車場からベンツを出してもらうと...なぜかパトカーに変わっていた! しょうがないんで警察へ出頭すると、パトカーを盗まれた警察官からヒドい目に遭わされるわ、やっとこさ取り戻したベンツのトランクからは何故か全裸の凶暴な東洋人が飛び出してくるわ。しかも歯医者のステュは、何故か地元のストリッパー(『ブギーナイツ』のローラーガール役でおなじみヘザー・グラハム)と結婚していたことが判明! なにかと口ウルサイ婚約者にバレようものなら殺される! そしてホテルの部屋にはいつの間にか、あのトラの持ち主だという超有名人が!
まあ、決してお上品ってワケではない。下ネタ、薬ネタたっぷり(笑)。でもミステリーじみたプロットと予測をぶっちぎる意外性、それらすべてをキチンと爆笑に結びつけ、最後にはちょっとシアワセな気分にまでさせちゃう脚本のセンスがとってもスマートなのだ。もともとアメリカは、練りに練り洗練を重ねた「笑い」を華咲かせた土地。そう思えばここにはプレストン・スタージェスやビリー・ワイルダー、ニール・サイモンらのエッセンスもちらほら見て取れる。そんな伝統もちょっと感じさせてくれる、まぎれもなく近年屈指のコメディ映画だ。
Text:Milkman Saito
『ハングオーバー!消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』
監督:トッド・フィリップス
脚本:ジョン・ルーカス、スコット・ムーア、トッド・フィリップス、ジェレミー・ガレリック
出演:ブラッドリー・クーパー、エド・ヘルムズ、ザック・ガリフィアナキス、ヘザー・グラハム、ジャスティン・バーサ、ジェフリー・タンバー
原題:The Hangover
製作国:2009年アメリカ映画
上映時間:100分
配給:ワーナー・ブラザース映画
7/3(土)より、シネセゾン渋谷他全国順次ロードショー!
http://wwws.warnerbros.co.jp/thehangover/
© 2008 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.