honeyee.com|Web Magazine「ハニカム」

Mail News

ピラニア3D

ピラニア3D

アドレナリン大放出のスプラッター
ピラニアと金髪美人が暴れまくる

11 8/31 UPDATE

果たしてあなたは3D映画に何を求めているのか?

いくら『アバター』や『トランスフォーマー/ダークサイドムーン』の奥行きの表現が素晴らしかった、などといったところで、そんなものは結局のところ下らないことなんである。通常の2Dの映画において、「画面が平面的だ」あるいは「立体感がある」といった言葉がフツーに使われるように、別に飛び出してなんてくれなくても我々は勝手に脳内変換してスクリーンの像を見ているのだ。

では、あるべき3D映画とは? そんなの決まっている。もともと立体映画なんてコケおどしの最たるものなのだ。映画なんて所詮は見世物じゃないか、という、まっすぐなエクスプロイテーション主義の産物なのだ。つまるところ、芸術性や美術性なんて言いつくろいに過ぎず、なんのこたあない、要はビヨーンと下品に、アホみたいに飛び出してくれりゃくれるほど嬉しいものなのである。前述の『トランスフォーマー~』だって、ツカミはパツキンねえちゃんのダイナマイトボディだったじゃないか。

んで、この『ピラニア3D』、見事にまっすぐコケおどし、見事にまっすぐ見世物根性、見事にまっすぐエクスプロイテーション。ビヨーンと下品に、アホみたいに飛び出しまくってくれるのである。なにが飛び出すかというと、おっぱい、ケツ、ゲロ、濡れたTシャツ、臓物、噛み切られたチ●●......。ドラマの中にリゾート系ハードコア・ポルノを撮りに来たクルーが出てくるが、すくなくとも3D的表現に関しては、ほとんどアメリカン・ポルノのセンスなのだ。ジェイムズ・キャメロンなんざコレ観て怒ったらしいが、なに言ってんだよ、アンタの監督デビュー作はこのオリジナル版の出来の悪い続編『殺人魚フライングキラー』じゃねぇかっつの。

そう、これはロジャー・コーマン製作総指揮、元日活の肉体派女優・筑波久子製作、ジョー・ダンテ監督で'78年に作られた快作『ピラニア』のいちおうリメイクなのだ。いちおう、というのは設定から物語からほとんど無関係だからだが、もともとの作品が『JAWS/ジョーズ』に端を発する動物パニック映画ブームの一変種に過ぎないことを考えると、まあ大した問題ではない。つまりは「狂暴な生物がヒトのいっぱいいるところに現れて、グチャグチャに喰いちぎる」ってワケである。

しかし、その"歴史"をきっちり押さえているところがニクいんだなあアレクサンドル・アジャ。血も涙もない凶悪スラッシャー映画『ハイテンション』でホラー・ファンを狂喜させて以来、『ヒルズ・ハブ・アイズ』『ミラーズ』と2作続けてリメイクながら、本家より数等面白くもエゲツない映画をモノしてきたこの監督(ちなみに父親はどちらかといえばヒューマンな映画を撮るフランスの監督アレクサンドル・アルカディ)。エロだけじゃなく、今回は残虐描写もいつも以上、リミッターが壊れたようにすさまじい(特殊メイクは斯界の荒事師ニコテロ&バーガー。さぞかしヤリ甲斐があったろう)。そんな狂った映画の、なんと冒頭に登場するのはリチャード・ドレイファス、風体からして『JAWS』の主人公マット・フーパーそのまんま。人喰い鮫を仕留めた彼が、なんとピラニアにズタズタに喰われちゃうんである!! アヴァンタイトルにこんな神をも恐れぬシーンを据えてみせること自体が、映画作家としてのアジャのこだわり、図太さの表明であろう。さらにピラニアの専門家には、「研究者」=「ドク」=『バック・トゥ・ザ・フューチャー』って連想でクリストファー・ロイド。「濡れたTシャツ祭り」のホストには『ホステル』の天才鬼畜監督イーライ・ロス。

いや、もうお見事、キャメロンとは逆のことを言おう、「これぞ3D映画のあるべき姿だ!!」

text:Milkman Saito

監督:アレクサンドル・アジャ
出演:エリザベス・シュー、アダム・スコット他
制作年:2010年
制作国:アメリカ
上映時間:89分
配給:ブロードメディア・スタジオ

8月27日(土)よりTOHOシネマズ六本木ほか全国ロードショー
R15指定

http://www.piranha-3d.jp/
©2010 THE WEINSTEIN COMPANY LLC ALL RIGHTS RESERVED