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ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン

ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン

抱腹絶倒のアラフォー女子コメディ

12 5/14 UPDATE

いつの時代も、コメディはアメリカ映画の主流である。多少の波はあれ、常に新しい才能が現れてTVやスクリーンを賑わせているわけだが、ここ数年、ちょいとばかし大きなうねりが起こっているのですね。それが『40歳の童貞男』('05)や『ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い』('09)に代表される、 (ゲイでもないのに)熱い友情を交わしたオトコどもがドタバタする、って類の作品。古くはニール・サイモンの『おかしな二人』あたりに発するのではないかと思われるこのシチュエイション、本国では「ブロマンス(=「ブラザー」+「ロマンス」)」などと呼ばれ、とっくの昔に普通名詞化しているが、このテの映画を観るたびにバカ笑いしつつも思うのは「女性の存在があまりにおざなりじゃないか?」ということ。ま、オトコである筆者からしても、ちょっとばかし気になっていたのも事実なんだな。

「それならワタシたちが、女による、女たちのためのコメディを作ってやろうじゃないの!」と名乗りを上げたのが、LAの名門即興コメディ劇団「グラウンドリングス」出身で、コメディアンの登竜門「サタデー・ナイト・ライヴ(SNL)」のレギュラーも長く務めたクリステン・ウィグ(昨年末に公開された『宇宙人ポール』でキリスト教原理主義者の娘を快演していた、あの彼女)。気心知れたグラウンドリングスとSNLの同志を集め、女性にしか絶対に書けないホンネぶっちゃけの脚本を執筆、自ら主演したのがこの「女性版ブロマンス」だ。

経営していたケーキの店も潰れ、恋人も去り、今やセフレから一方的に呼び出されるのをただ待つしかないアラフォー女性アニー(ウィグ)。そんなドン底境遇のさなか、唯一の心の拠りどころである親友リリアン(『お家をさがそう』のマーヤ・ルドルフ)が結婚宣言! ブライズメイズ(花嫁介添人たち)のまとめ役を頼まれたアニーは他の4人と初対面、これが揃いもそろって変わり者ばっか。とりわけ花婿の太った妹メーガン(メリッサ・マッカーシー)の唐突で下品な言動は謎謎謎。そして、花婿の上司の美人妻で何をやってもソツがないヘレン(ローズ・バーン)にはあからさまに対抗心を燃やすアニーだが......。

なんせ心意気は「女性版ブロマンス」、プロデューサーは『40歳の童貞男』のクリエイター、ジャド・アパトーだから開き直りようは相当なもの。下ネタだってハンパじゃない。ことに高級ドレスショップでの言語を絶する大騒動(正直言ってスカトロです)は確実に映画史に残るモノ凄さ。いってみれば『ハングオーバー』におけるザック・ガリフィアナキス的な役回りといえるメリッサ・マッカーシーのキャラクターも破壊的だ(でもこのぶっ壊れ女が後半、実に美味しいところをかっさらっていって泣かせるんだよなあ)。

とはいえ、やはりメインはドン底女・アニーなのだ。自暴自棄な壊れっぷりの描写には容赦がなく、身につまされまくる女性たちもたいそう多いだろう。

ってところで引っかかるのが、アニーの実母を演じるジル・クレイバーグ。本作では、アル中でもないのに断酒会に通って人間観察してるってキャラなのだが、新しい女性のホンネを示して'70年代末にブームとなった"女性映画"の代表作『結婚しない女』('78、これでカンヌ主演女優賞)の彼女なんだよね。このキャスティングだけみても、クリステン・ウィグの真意は示されているんじゃないかな。

ちなみにリリアン役のマーヤ・ルドルフ。なんと"Loving You"のミニー・リパートンの娘なんだって! しかも現役監督ぶっちぎりの天才、ポール・トーマス・アンダースンのパートナーなんだってさ!!!

text: Milkman Saito

ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン
エグゼクティブ・プロデューサー・監督: ポール・フェイグ
脚本: アニー・マモーロ&クリステン・ウィグ
プロデューサー: ジャド・アパトー
出演: クリステン・ウィグ、マーヤ・ルドルフ、ローズ・バーン、メリッサ・マッカーシー
2011年/アメリカ/カラー/125分/
原題: Bridesmaids
字幕翻訳: 栗原とみ子
字幕監修: 町山智浩
配給: 東京テアトル
宣伝: アステア
© 2011 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED

ヒューマントラストシネマ渋谷ほか、全国ロードショー中

http://bridesmaidsmovie.jp/