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ロボット

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これぞインド式エンタテインメント映画の神髄!

12 5/23 UPDATE

インド映画といえば'98年、突如として日本にバブリーなブームを巻き起こした『ムトゥ 踊るマハラジャ』、そしてこの作品で主演した"スーパースター"ラジニカーント、ってイメージがいまだにあるんじゃないだろうか? でもインドは広い。究極の多民族国家だ。映画が産業として成り立っている言語/地域だけでもおよそ7つ。その中では『ムトゥ』が属する南インドのタミル語映画はNo.2。あくまでトップは「ボリウッド映画」と呼ばれるムンバイ(旧称ボンベイ)を中心とするヒンディー語映画である。

で、本作はといえばやはりラジニカーント主演映画。つまりタミル語映画である。それなり以上のインド映画ファンである僕は、映画祭上映やDVDで彼の最近の彼の映画もおおむね観ているが、さすがに60歳を過ぎてしまっただけにちょいとばかしキツくはなってきていた。

しかしコレで"スーパースター"は起死回生、タミル語圏内だけでなく、全インド&世界中で爆発的大ヒット! トシだとは誰にも言わせない!とばかりにヴァイタリティ溢れ、なんでもアリな展開に唖然とするしかない超絶エンタテインメントなのだ。

ロボット工学の博士バシー(ラジニカーント)は画期的なアンドロイドの作成に成功する。チッティと名付けた第一号機(もちろんラジニの二役)を学会に発表し、汎用ロボとしての優秀性を世界に問うた。

それを嫉妬したのがバシーの恩師ボラ教授。善悪の判断がつかないロボットは危険きわまりなく認められるものではないと指摘するが、バシーはチッティを改良し、感情を与えることに成功した。だが、これがいけない。バシー博士は忙しさにかまけて会えない恋人サナ(ボリウッドの世界的名花、アイシュワリヤー・ラーイ・バッチャン。相変わらずの美しさ!)の相手を、自分の代わりにチッティにさせていたのだ。チッティにサナへの「愛」が芽生えるが......。

まあ、そんなストーリーはいつかどこかで見たようなものだ。しかしボラ教授がチッティに戦闘用プログラムを埋め込み、殺人兵器に変貌させてからの展開はもうグレイト。初期の作品でこそ悪役も多かったが、"スーパースター"となってからは無敵のベビーフェイスだったラジニがもう、鬱憤晴らすかのようにやりたい放題の殺しまくりっぷり。間違いなく元ネタであることが明らかな『ターミネーター』(アニマトロニクス&SFXには『ターミネーター2&3』のスタン・ウィンストン・スタジオ改めレガシー・イフェクツが携わっている!)や『マトリックス』から遥か遠くへイマジネーションを暴走させ、CGアー​ティストの労力をとことん浪費する怒涛驚倒の大メタモルフォーゼなクライマックスにはもう、​ありがたやありがたやと唱えるしかないのですね。

ただ、この上映にはちょっと問題がある。2011年の東京国際映画祭でも上映されたタミル語オリジナル版は177分。だが今回の「日本版」は40分弱もカットされたヒンディー語版なのだ! ......とはいえ、まあストーリーの進行にたいした影響はない。改変もさほど目立たない。しかし前半にある、馬鹿馬鹿しいまでに豪壮なミュージカル・シーンがふたつもカットされているのである! こりゃあいけません。

とりわけ監督のS・シャンカール。'98年の『ジーンズ/世界は2人のために』では、今回もコンビを組んだ、今やすっかりワールドワイドなミュージシャンA.R.ラフマーンの手によるたった1曲のミュージカル・シーンのうちで世界一周旅行をやってのけ(物語とは無関係なのに、本当にロケして!)、その底の抜けた贅沢さでメガヒットへ結びつけた御仁である(ま、それ以前に主演がアイシュワリヤーだったからだが)。今回の上映版でカットされたシーンでも、なんとペルーはマチュピチュまで主演者ふたりが赴き、遺跡の中で現地人と群舞を披露するという壮大な無駄遣いシーンがあるんだよね!!  これぞインド式エンタテインメント映画の神髄だと僕は心底思うのだけれど、ま、観終わったあとの「エラいモン観た」感はさほど減じないので今日はこれくらいにしといたろ。ちなみに配給さんもこんなことしております。

text: Milkman Saito

「ロボット」
監督: シャンカール
出演: ラジニカーント、アイシュワリヤー・ラーイ
2010/インド/139分/16:9ワイドスクリーン/カラー/ドルビーデジタル
提供: メダリオンメディア
配給: アンプラグド

渋谷TOEIほか全国順次公開中

©2010 SUN PICTURES,ALL RIGHTS RESERVED.

http://robot-movie.com/