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間奏曲はパリで

間奏曲はパリで

愛情関係の倫理へ大胆に踏み込む。

15 4/03 UPDATE

主演のイザベル・ユペールは、1953年生まれ。なんと撮影時ですでに還暦なのに、恐ろしい若々しさ、可愛らしさ。映画の悪魔に魂を売ったのではないかと思えるほど、年齢を超越した愛らしい仕草で、99分が瞬く間に過ぎてしまう。でも見どころは彼女の脅威の年齢不詳ぶりだけでなく、夫婦やカップルならいずれは迎える、年齢を重ねてからの倦怠期の問題だ。

フランスのノルマンディにある田舎町で、ブリジット(イザベル・ユペール)は夫グザヴィエ(ジャン=ピエール・ダルッサン)と畜産業を営んでいる。牝牛の品評会で、ブリジットがティアラを差し出して「これを付けたら?」というチャーミングな発案も、グザヴィエはつれなく「失格になる」とはねつけるだけ。でもこの場面だけでも、ブリジットの中にある少女性が伝わってくる。そして、訪ねてきた姪が友人を集めてパーティーを開き、夜更けに覗いたブリジットは、パリから来た青年スタンと良い雰囲気に。ときめく予感にブリジットは、気分を一新するため、パリへと二泊三日の旅行をする。

ブリジットはもちろん新鮮な出来事を期待して、自分でも予想のつかない旅に胸が弾む。しかし同時に彼女は胸元に、長らく皮膚炎を患っている。彼女がアバンチュールを楽しむのなら、胸のかぶれを男性に見せなければならず、当然それが躊躇する理由となる。

スタンはまだいかにも青年らしく、デートでも未熟な段取りぶりだ。ここでブリジットが、男の情熱や手際を見越してあっさり振る舞う心理が、登場人物の男性たちを混乱させる。しかしそれはブリジットの一貫した、深入りせず、感情を人前では露わにしない性格そのものでもある。その彼女が感情をさらけ出すとき――それは、伝聞やカメラ越しに、我々だけがひっそり覗くことを許された瞬間となる。

恋の都パリではスタンの他にも、歯科医の学会で訪れたデンマーク人の男性ジェスパー(ミカエル・ニクヴィスト)が、ブリジットにアプローチをかける。彼はインテリジェンスと同時に情熱がある。パートナーのいる観客の男性は、ジェスパーをどう見るだろう。ブリジットに自分の妻や彼女を想定して嫉妬? それとも、自分自身がジェスパー? おそらく女性からは、ジェスパーのキャラは結構支持されると思う。大人でありながら熱烈で、そして女性が気にしている部分を受容できる度量は、経験によって熟成された男性のものだ。

この映画の最大の魅力は、愛情関係の倫理へ大胆に踏み込んで描いた点だろう。普通ならば絆のためにストッパーがかかる部分を、絆が大事だからこそアバンチュールが魅惑的に機能する。この自由さと許容が、なんとも大人なのだ。タイトルだけで、主婦がパリでうっとりする、女向け恋愛映画のように安易な思い込みはしないでほしい。パートナーとの時間を見つめ直す大事さを描いた、男性にこそ薦めたい佳品だ。

text: Yaeko Mana

『間奏曲はパリで』
監督・脚本:マルク・フィトゥシ
撮影:アニエス・ゴダール
キャスト:イザベル・ユペール/ジャン=ピエール・ダルッサン/ミカエル・ニクビスト/ピオ・マルマイ/アナイス・ドゥムースティエ
配給:KADOKAWA

2015年4月4日(土)より、角川シネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMA(オープニング作品)他全国ロードショー
http://kansoukyoku-paris.jp/


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