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大統領選を控えた韓国。財閥企業であるミライ自動車のオ会長は、次期大統領候補のチャン・ピル(イ・ギョンヨン)へ裏金を送っていた。新聞社の主幹で策士であるガンヒ(ペク・ユンシク)を兄貴と慕い、彼の手先となって悪事を代行するアン・サング(イ・ビョンホン)は裏金の証拠を手に入れ、さらに「保証」としてコピーを取った。だがそれがチャンに知れて怒りを買い、それ以降は落ちぶれてしまう。
その頃、サングに証拠を奪われたために、若手検事のジャンフン(チョ・スンウ)も出世の機会を失っていた。韓国ではどれだけ実力があろうと、コネを持たずに検事が検察庁まで登りつめるのは至難の業だった。2年後、オ会長たちの不正を追い続けるジャンフンは、チンピラに成り下がったサングが、いまだにチャンたちの周辺にいるのを嗅ぎつけ、彼に突破口を見出していくのだが......。
サングが落ちぶれる前の伊達男な時代の、イ・ビョンホンの衣装が素晴らしい。すべてオーダーメイドの、赤やグリーンの意表を突く色合いや、風変わりなボタン位置のスーツ。髪型も不思議なセットをしているが、ギリギリの奇抜さで、悪趣味と紙一重の際どさゆえに艶やかだ。映画は記者会見を行うイ・ビョンホンの姿から始まり、ネクタイまで淡いグレーで統一したタイトなスーツに、黒の手袋がひときわ目を引く。派手さと優美さのバランスが見事だ。
監督からの依頼を、「自分では若すぎるから」と三度も断ったというチョ・スンウも、年齢など超越した検事役がはまっている。正義の信念に燃えながらも、コネの社会にフツフツと怒りをたぎらせる複雑な役どころだが、逆に彼のどことなくのんきな顔立ちこそ、大事件に食らいついていくしぶとさが似合う。
この二人で手を組み、復讐と信念による冒頭の記者会見を仕掛けるのだが、ここに至るまでも、ジャンフンが一筋縄ではいかない駆け引きを持ち掛ける。率直なだけに驚かされ、心情的に観客の心を持っていく強烈さだ。それでも大統領・大企業・新聞社という連帯は恐ろしく、サングとジャンフンは逆襲に遭って窮地に立たされていく。
この自動車会社のオ会長や、チャン大統領たちの夜の遊びがゲスの極みとしか言いようがない。若い女性たちのヌードがズラリと並ぶのも圧巻だが、芝居とはいえ中年になってから、こんなシーンを撮影するのは俳優たちもつらいのではと心配になるほど、下世話な描写がある。
巧妙に練られたプロットは最後まで気が抜けない。小粋なムードもたたえた、非常に見応えのある作品だ。
text: Yaeko Mana
『インサイダーズ 内部者たち』
監督:ウ・ミンホ
原作:ユン・テホ
脚本:ウ・ミンホ
撮影:コ・ラクソン
美術:チョ・ファソン
出演:イ・ビョンホン/チョ・スンウ/ペク・ユンシク/イ・ギョンヨン/キム・ホンパ
配給:クロックワークス
全国公開中
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